雑多庵 ~映画バカの逆襲~

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ドキュメンタリー出身であり、劇映画では映画祭の常連、『そして父になる』でカンヌの審査員特別賞を受賞し、映画は日本で大ヒット。日本を代表する映画監督の一人である是枝裕和監督の新作です。劇場の埋まり具合を見る限り、今回も売れそうな予感。

海街



あらすじは予告編を見ていただければだいたい分かると思いますが、要するに

鎌倉の実家で三姉妹で暮らしている長女幸、次女佳乃、三女千佳。突然の何年も前に他の女を作って家を出た父親の訃報。複雑な思いで葬式に出た姉妹が出会ったのは父が遺した異母妹すず。三姉妹はすずを鎌倉に呼び寄せ、一緒に暮らすことを提案し、四人目の妹として迎え入れる。「海街」鎌倉での四人の日常を淡々とだが、瑞々しく描いた日記=diary的映画。

って感じにまとめられると思います。

是枝監督の作品全体に言えることですが、大きなドラマを派手に描くのではなく、淡々と日常を描いていくスタイルなので、雰囲気に浸れるか、作品世界の人々に愛着を持てるか、といったところがポイントになるでしょう。だから、ストーリーについて語っても仕方ないでしょう。僕がうだうだ語るのを読むよりとりあえず観とけって話です。

是枝演出の自然さ
是枝監督はドキュメンタリーの経験があるからか、人間の素の部分を引き出すのがうまいなぁと思うんですよ。撮影現場でも細かく演技指導するよりも役者に合わせて臨機応変にシーンを加えたり、セリフを調整、場合によってはアドリブで任せてしまうところもあるそうな。これは監督自身が脚本を書いているからできることでもあるんですが、いかに自然な雰囲気や生活感を出すかに拘っているからこそだと思います。実際、子役の演出についてはほとんど演技をつけないんだそうで、現場で直接流れを教えてセリフを無理やり覚えさせることはしないそうです。よく子役が変な感じがする映画とかドラマってあるじゃないですか?あれって大人が考えたセリフを無理やり子供に言わせているか変なことになっていると思うんですけど、初期のドキュメンタリーが地方の小学校に密着したものだった是枝監督は、子どもを子供らしく見せるには大人が余計なことをしてはいけないと分かっているんですね。この子役の演出法はスティーブン・スピルバーグとも同じだったりします。『海街diary』では子役というほどの年齢の人はあまり出ていませんが、この人はこういうこと言うよね、普段こういうやり取りあるよね、って雰囲気が全篇にわたって展開されています。

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漂う少女漫画感
是枝監督の作品って、なんとなく男が描いた少女漫画みたいな雰囲気があると考えているんですけど、そう思うことありません?日常描写の細かさ、女子の会話の妙なリアルさ、セックスが存在しない感じなんかが少女漫画っぽいなぁと管理人は感じております。是枝監督と近い世代に岩井俊二監督がいますが、彼の場合は少女漫画そのものを映画にしているような感じがするんですよ。この違いを説明するのって難しいんですけど、簡単に言えばリアリティのレベルの違いです。岩井監督の作風ってなんか変な感じがするんですよ。まぁ、それが作家性なんですけど、岩井監督の映画がリアルかというとちょっと違うんじゃないかなと。対する是枝監督は「少女漫画の感性」で映画を作っているような感じですかね。『海街diary』も少女漫画の雰囲気がかなりするんですけど、それもそのはず、原作が同名の少女漫画なんですね。吉田秋生さんが2006年から月刊フラワーズ(小学館)で連載を続けているものです。吉田さんはデビューが1977年らしいので、ベテラン級の方ですねぇ。

キャラクター表現としての食事と服装
本作の魅力は何と言っても俳優たちの活躍でしょう。是枝演出で自由にやっている感じがとても心地いいんですよ。監督の前作『そして父になる』でも言えましたが、食事のシーンが特にいい。家族の食卓の雰囲気がかなり伝わってくるんです。この手の日常映画ではいかに登場人物の個性と生活感を出せるかが問題になるでしょうが、食卓ってその人のバックグラウンドとか、家族との関係性、性格なんかが現れると思うんです。だから、映画における食事シーンって人物描写としてとても重要。本作は食事の場面の多さもありますが、服装でも人物を表現しきっていると思います。誰がどういう場面でどういう服を着ているかをよく観てほしいですね。しっかり者の長女、えーかげんな次女、姉たちとは違ったセンスの三女ってことがヴィジュアルだけで分かります。

配役も注目
長女幸役が綾瀬はるかさん、次女佳乃役が長澤まさみさん、三女千佳役が夏帆さん、すず役が広瀬すずさんという四姉妹のハマり具合と楽しそうな雰囲気が素晴らしいです。それぞれの魅力や可愛いところを引き出せている点だけでも監督はいい仕事してます。この人、こういう表情するんだってなる方も多いかと。特に広瀬すずさんはドラマやCMでしょっちゅう見るけど、そのどれでも見せていないような表情や演技をしていたと思います。あと、監督はやたらと長澤まさみさんのエロいところを狙ってんなあ(笑)去年の実写劇場版『ルパン三世』の北村龍平監督は長澤さんを峰不二子役で起用したがっていたそうですが、『海街diary』を見ればそれがなんとなく分かるんじゃないかと思いますよ。

Fujiko
ボン!キュ!ボン!で長い美脚と言う凄すぎるプロポーションの不二子

できたら続編を作ってリアルタイムで彼女たちの今後を追いかけてほしい映画でした

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