雑多庵 ~映画バカの逆襲~

管理人イチオシの新作映画を紹介するブログです。SF、ホラー、アクション、コメディ、ゲーム、音楽に関する話が多め。ご意見・ご感想、紹介してほしい映画などあれば「Contact」からメッセージを送ってください。あと、いいお金儲けの話も募集中です。

先週は『進撃の巨人』後編にダメージを受けてしまい、日本で漫画を映画化するとなんでこうも変なことになるんや~、となっていましたが、今回紹介する『バクマン。』は『進撃』同様、漫画原作かつ、東宝製作の映画で逆に成功しているパターンです。

bakuman


ジャンプの漫画家マンガ
原作は「デスノート」を大ヒットさせた大場つぐみ(原作)と小畑健(作画)のコンビによる同名のマンガ。高い画力を持ちながらも流されるように高校生活を送っていた真城最高(サイコー)と、絵が書けないが文才はある高木秋人(シュージン)がコンビを組んでジャンプ1の漫画家を目指していく過程を描いた漫画家マンガです。

漫画家マンガといば、藤子不二雄Aの「まんが道」や、管理人が好物の島本和彦による「燃えよペン」や「アオイホノオ」などがありますが、本作は少年漫画雑誌最高の発行部数を誇る週刊少年ジャンプを題材にしているところがポイント。「まんが道」は昔の作品なので今とは状況が少し違いますし、島本和彦が書いているのは月刊誌が中心の大人気作家とは言い難いポジションの漫画家の話(作者自身がそうなんだけど笑)なので、「バクマン。」のように現在の週刊誌の状況、それもジャンプの話となるとなかったわけです。

ジャンプといえば「友情・努力・勝利」がキーワードの分かりやすい王道作品が多く、『ドラゴンボール』、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、『るろうに剣心』、『スラムダンク』『ワンピース』、『NARUTO』など誰もが知っている作品ばかり。でも過去には諸星大二郎や本宮ひろ志など濃い作風の新人も発掘していることも特徴。「バクマン。」では漫画界の新人のデビューの仕方や週刊連載の苦労、編集会議の話、アニメ化、さらにはジャンプ最大の特徴である読者アンケートによって作品の方向性を大きく変えていく「アンケート至上主義」についてリアルに描かれています。映画では編集部の荒れ具合や会議のシーンがやたらリアルに見えます。

映画は座組みで決まる
最近の日本映画ではやたら多い漫画原作映画ですが、多くが「原作の良さが失われた」とか単に映画として面白くなかったりするのが困りもの。ですが、本作は成功していると言えるはず。原作は高校生から始まって様々な作品を経験していくことでジャンプの看板作家として成長していく長い年月の話でしたが、映画では処女作品で手塚賞の準入選、週刊連載向けに書いた二作目で同世代の天才漫画家「新妻エイジ」とアンケート一位を争う、という話に変えています。確かに圧縮しまくったことで「主人公コンビが天才すぎじゃねーか?」というツッコミが生まれますが、そこはマンガだから!ジャンプだから!ってことで乗り切れ!このマンガらしさを押し通す熱量が本作のいいところ。同じマンガ原作の「モテキ」をヒットさせた大根仁監督だからこそでしょうが、マンガらしく思い切ったハイテンションをキープするのが見事です。

マンガ原作で問題になりがちなキャスティングですが、ご心配なく。
サイコーを佐藤健、シュージンを神木龍之介というマンガ感のある見た目の二人をキャスティングした時点でこれはいける!と思ったものですが、脇には皆川猿時、桐谷健太、宮藤官九郎、山田孝之などやたら濃い見た目や強いキャラクターを持っている人ばかりが出ているので全体的にマンガ感が漂います。ドラマの「ど根性ガエル」でゴリラパン作っていた新井浩文さんも出ていますが、普段のチャラ男・ダメ男感を抑えまくったルックスに一瞬だれか分かりませんでした笑 最近のドラマや映画でしょっちゅう見ているリリー・フランキーさんは心配していた「もうこの人見飽きた」という感覚にはならず、編集長役に見事にハマっていたと思います。あまりに見すぎて「いい加減にしろ!」と思えてきた染谷将太は劇中で超ウザイ人の役をやっていたので、俺の気分を製作側はなぜ知っている?と思えるぐらいのベストキャスティングでした。あと、ヒロイン役の小松菜奈さんは管理人がムカついて仕方なかった『渇き。』で一番光っていた人ですが、モデル出身ならではの異世界の人感がマンガの世界にハマっており、ソフトフォーカス気味・逆光などを利用した撮影でものすごく可愛く映っていました。キャスティングに文句を言う人はほとんどいないかと思います。

管理人は音楽好きと言うこともありますが、本作の音楽とテーマ曲をサカナクションが手掛けている点に注目です!映画のテーマ曲ってタイアップとして売っているだけの印象があるものがかなりあるのですが、Fury Roadとか進撃とか・・・、本作の場合は劇中の音楽も同じ人が手掛けることで作品とのつながりが密接になっています。サカナクションがいい仕事しているので、ファンは必見です!


テーマ曲『新宝島』のPV

本作の座組み(どういう製作委員会の構成でキャストやスタッフィングをどうするかといったこと)は前述の通り上手くいっているのですが、企画とプロデュースを川村元気さんが手掛けているのですな。この人は『電車男』『デトロイト・メタルシティ』『モテキ』などヒット作連発している東宝の名プロデューサーなんですよ。道理で座組みの時点で上手くいっているわけだ笑

ちょっとリアルではない?
少しだけ気になったんですけど、編集部のあたりとかリアルっぽい描写な割には、ジャンプの週刊連載している人がアシスタントなしで描いていたり、誰も作画作業でコンピューターを使っていないところが気になりました。話の都合上アシスタントは出さない方がいいのでしょうし、マンガは手で描くものとの認識が読者にされている以上はコンピューターで背景に処理したり、作画したりといった現代のマンガの描き方は出さない方がいいんでしょうな。

すべてのクリエイターに捧ぐ
漫画家についての話ですが、観ているとクリエイティブ関連の仕事をしている人にとっては身に覚えのある話もけっこうあるのではと思ったり。個人的に「マンガは読者に読んでもらって初めてマンガになる」って話がグッときました。山田孝之が「好きなように描きたいのならば同人誌で描けばいい。プロとしてやる以上はお客さんに向けて描かないとダメなんだよ!」といった内容のセリフを一気に言う場面があるのだが、これはプロとして必要な考え方だと思います。こういった点でクリエイターの方にはお勧めの映画です。

エンディングが神がかっている!
本作では作画の過程を壁に映したり、絵を浮かび上がらせたり、作家同士のバトルを文字通り対決させることで描くなど、映画としての工夫がされているのですが、一番グッと来たのはエンドクレジット。マンガの背表紙が並んでいるのを映すのですが、ジャンプの単行本をベースに作者の名前のところをスタッフの名前に置き換え、「サーキットの狼」を「車両の狼」とするなどかなり凝ったものです。全ての背表紙に元ネタがあるはずなので、元ネタがどれだけ分かるかでジャンプ好き度が分かるのではないでしょうか!このエンドクレジットを見るためにもぜひ観てください!!

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