雑多庵 ~映画バカの逆襲~

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世界一のオタクな映画監督クエンティン・タランティーノの新作。

脚本が流出したことにキレた監督が一度は映画化を中止したものの、その後の朗読会での評判などを受けて改めて映画化に乗り出した作品だ。

舞台は南北戦争後のアメリカの雪山。
時代設定的に西部劇に分類されるのだが、前作『ジャンゴ 繋がれざる者』のようなテンションの高い、主人公がヒロイックな活躍をするものを期待してはいけない。確実に人は選ぶが、ハマる人もまた確実にいる作品なので紹介しよう。

Uragiri8
毎度おなじみ高橋ヨシキによるポスター

密室殺戮劇
ワイドスクリーンいっぱいに広がる雪原を駅馬車が走ってくる。
中には指名手配犯の女(ジェニファー・ジェイソン・リー)と彼女を護送する賞金稼ぎ(カート・ラッセル)が乗っている。その駅馬車に乗り込んでくる北軍兵士の黒人(サミュエル・L・ジャクソン)、南軍出身の新任保安官(ウォルトン・ゴギンズ)。
吹雪によって先に進めなくなった駅馬車は山小屋へ。そこには先客がいた。イギリス系の死刑執行人(ティム・ロス)、南軍の将軍(ブルース・ダーン)、メキシコ系男(デミアン・ビチル)、カウボーイ(マイケル・マドセン)。
見るからに胡散臭く、秘めたものがある8人。彼らは吹雪が収まるまで動くことはできない。仕方なく話していくうちに、元から信用のない彼らの間で疑心暗鬼が加速していく。やがて、疑惑は殺意へと変わる!一人また一人と倒れていく状況で最後まで生き残るのは!?

良くも悪くもタランティーノ映画

まぁ、良くも悪くもタランティーノ映画である。

タランティーノ独特の大して意味のない感じ(実は本作では含みのあるセリフが多いのだが)の会話シーンがダラダラと続く。これは毎度のことなので今までノれなかった人は本作も厳しいだろう。特に会話劇である都合上、本作は特に会話シーンが多い。ロケーションもあまり変わらないので、睡魔に襲われる人もいるだろう。ただ、本作は「65ミリフィルムで撮影された超ワイドスクリーン映画」という60年代で途絶えた映画スタイルを採用していることもあって、昔のハリウッド大作の雰囲気やテンポ感を再現することも狙いだったと思われる。だから盛り上がるまでがスローに感じてしまうのも意図したものなのかもしれない。

前半は確かにゆったりとしているが、本編後半から一気にヒートアップしていくので安心せよ。盛大に血糊を使用した景気の良い人体破壊もやってくれるので前半のタルさは一気に吹き飛ぶ。このあたりのサービス精神もまたタランティーノらしさ。

聴き所も見どころも満載
注目ポイントの一つはクセの強い俳優陣による演技合戦。タランティーノ映画常連俳優による息の合った様子だけで十分楽しい。安定のサミュエル・”マザファッカ”・ジャクソンのマザファッカトーク、前作『ジャンゴ 繋がれざる者』から続投の西部劇顔俳優ウォルトン・ゴギンズのニガニガ発言(字幕ではクロん坊とか、クロと訳さないと意味が正確に伝わらないよ!)、ジェニファー・ジェイソン・リーの場を破壊していくデンジャーな発言など聞き所満。ジェニファー・ジェイソン・リーのぶん殴られたり、色々とぶっかけられて(日本発のHENTAI文化”BUKKAKE”はないのであしからず)変化する顔面はビジュアル的にすさまじいものがある。

Walton
筆者お気に入りのウォルトン・ゴギンズは西部劇スタイルが似合う貴重な存在

映画的な注目ポイントとして、ワイドスクリーンが捉えるディテール豊かなセットや壮大な雪景色がある。
密室劇であってもセットの隅々が常に見えるからか、不思議と空間に広さを感じるのだ。これはプロダクション・デザインの種田陽平氏による部屋のレイアウトのうまさ、名撮影監督のロバート・リチャードソン(『キル・ビル』『カジノ』『ナチュラル・ボーン・キラーズ』など)の画面構成が良さによるものだろう。

憎みあう人々とでっち上げの感動のすばらしさ
前作『ジャンゴ』で奴隷主の白人をブチ殺し、前々作『イングロリアス・バスターズ』でヒトラーを抹殺したタランティーノ。同じく時代ものに挑戦した本作では山小屋をアメリカの縮図のように描く。北部の白人嫌いの黒人、南部の黒人嫌いの白人は現在でも残る人種問題。イギリス系やメキシコ系が共存しているのもアメリカ的。様々な人種や国籍を内包するアメリカだが、それぞれが大して交流せず、場合によっては互いに憎みあう関係となっているから面白い(日本の場合はアジア人同士で憎みあっているが・・・)。だからこそ”Hateful(憎悪に満ちた)”とタイトルにつけたのだろう。普段から憎みあっている人々がふとしたきっかけで殺しあう様はスパイク・リー監督『ドゥ・ザ・ライト・シング』を彷彿させる。スパイク・リーの場合は冷徹でインテリっぽい視点が目立つが、高校中退のタランティーノは勉強できない人間なりのアプローチで感動的なエンディングを用意した。密室暴力劇が感動的に終わることが信じられない人もいるかもしれないが、感動するんだ、これが。しかも、でっち上げであることを明言したうえで発せられるセリフであるにも関わらずだ。詳しくはネタバレなので伏せるが、憎みあう人々にとっての共通の敵とは?本当に憎むべき存在とは?全世界共通の真っ当な正義を見せてくれる。スピリットが真っ直ぐだから作りものの感動であってもいいのだ。映画ってそういうもんだろ?そして、エンニオ・モリコーネ節炸裂な曲が涙腺を刺激すること請け合いだ。

エンニオ・モリコーネ(御年87歳)は本作で(やっと)アカデミー作曲賞受賞!
様々な映画に参加した映画音楽の大巨匠だが、特に西部劇の楽曲で有名なのだ。


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