雑多庵 ~映画バカの逆襲~

管理人イチオシの新作映画を紹介するブログです。SF、ホラー、アクション、コメディ、ゲーム、音楽に関する話が多め。ご意見・ご感想、紹介してほしい映画などあれば「Contact」からメッセージを送ってください。あと、いいお金儲けの話も募集中です。

最近の日本映画はちょっと異常だ。

先日紹介した『アイアムアヒーロー』は今の邦画の潮流から考えると、異質な作品だ。
今の邦画といえば、ドSな先輩がどーのこーの言っている、予告を見ているだけでうんざりする映画や、誰が見るのかよくわからん公共事業みたいな地方振興映画が量産されている誰得な状況だ。是枝裕和作品のような人間ドラマ主体の「いい映画」はあるものの、全世代(特に中学生)が楽しくみられるようなエンタメ作品は瀕死の状況と言ってもいいぐらいだ。甘ったるくて、現実味のない世界か、「日常系」な淡々としたオトナな映画か。これでは中学生が喜ぶわけがない。そもそも、俺が面白くない!!実写界隈がこの状況なので、エンタメ精神にあふれたアニメーション作品が大ヒットを続けるのは当然だろう。正直なところ、劇場版コナンのほうが面白いじゃん?

そんな状況にあって、『アイアムアヒーロー』はメジャーの大作で死屍累々のゾンビ大殺戮映画を成し遂げた作品だった。ぬるま湯につかった数多の作品をぶち殺す勢いで作られた本気のエンタメである。その勢いは観客にも受け入れられ、興行的に大成功している。ゾンビは日本で売れないと言った連中は今すぐ製作者に土下座すべきだろう。本作は日本映画に希望をもたらす作品だと思った。

希望が持てる作品は『アイアムアヒーロー』だけではない。
今回紹介するのは、今年公開された邦画の流れを変化をもたらす作品群である。以下に紹介する作品は今年公開されたもののほかに、これから公開される期待値の高い作品もある。出来に差はあるが、どれもメインストリームから外れた作品なことは間違いないので、今のうちに見て日本映画の変化をリアルタイムで感じ取ってほしい。なお、似たような特集を映画秘宝が組んでいるので、更なる情報を得たい人はそちらも参照されたし(筆者は未読だが)。

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一本目『ライチ☆光クラブ』
litchi

同名の戯曲と漫画が原作。

大人たちの世界を否定した中学生たちがネバーランドよろしく、「光クラブ」を作り、そこで日々汚れた大人たちを粛正し続ける。彼らは工業地帯のような世界で日々を過ごしており、廃品を組み合わせたロボットの開発を進めている。ようやく完成したロボットは命じられたままに「この世で最も美しいもの」として、少女を連れてくる。少年たちは少女を聖なる存在として崇めるのだが、これがきっかけで光クラブは徐々に崩壊していく・・・

中学生の野郎だらけの集団の中に美人の女の子(中条あやみ)が入ってきたら、そりゃぁ、どれだけ統率がとれた集団だろうが崩壊が始まりますよ。中学生って設定のわりに出演者が歳くっているのはアレですけど、大人になりかけの年齢ならではの問題をよく描いた作品だと思う。そうはいっても、少年たちの成長を描いた甘酸っぱい話には全くなっておらず、体液と臓物にまみれた生臭い映画でございます。登場するロボット(声は杉田智和)の造形がなかなか良くて、ピュアな感じと同時に恐ろしさも感じられるようになっています。後半の大暴れするシーンはかなりのインパクトがありますよ。

二本目『ヒーローマニア 生活』
heromania

福光しげゆきの漫画『生活』が原作。

元サラリーマンの東出昌大がコンビニ店員として悶々と過ごしていた。荒れ放題の街に超ヘタレな青年の居場所はなく、ボロ家でコンビニ弁当と発泡酒を飲み、街のクズどもを粛正する妄想をして日々を過ごしている。今日もまた、コンビニではコピー機で遊ぶクソガキ、店内で酒盛りしてるジジイども、商品で遊んでるねーちゃんがいる。店長は見て見ぬふりをするだけ。そんなとき、いつも店内で立ち読みしている挙動不審なニート青年の窪田正孝が不良を叩きのめし、さらには下着泥棒をする場面に遭遇。これはチャンス!と東出くんは窪田くんを誘って自警団を結成。そこに情報通の女子高生の小松菜奈、若者狩りの常習犯の片岡鶴太郎が加わり、街のクズどもを叩きのめして吊るすTURUSIYAを結成する。

キックアスを狙ったような作品なのは分かるが、あそこまで突き抜けた感じがしなかったのが残念。
ウザいスローモーションやテンプレすぎな不良描写など勘弁してほしいところもかなりあったが、地方のヘタレ青年な東出くんや明らかに不審者な窪田くんなど俳優陣は頑張っていた印象。ポテンシャルは高いと思うので、もっと頑張ってくれ!と言いたくなる作品だった。ただ、戦いを終えて後のコンビニのシーンはすごく爽やかで気分が良くなる。あのシーンには、世界を変えるのはこういう行動なのかもと思わせるだけの力があった。

三本目『ディストラクション・ベイビーズ』
distraction

インディでは以前から有名人だった真利子哲也監督の初商業映画にして大傑作。今年の暫定ベストかも。

愛媛県の松山市が舞台。
日々喧嘩ばかりをして過ごしている青年が、たまたま出会った高校生と、各地で暴力行脚をする。

一行でまとめるとこんな感じか?
とにかく全編暴力。主人公にはほとんどセリフがなく、チンピラやその辺を歩いている人に絡んでは喧嘩ばかりする。なぜ喧嘩をするのかは一切描かれない。理由といえそうなことは、本人の「楽しければええんや」というセリフのみ。言葉が使えないハンデを乗り越え、身体のみで歩く暴力を表現してみせた柳楽優弥は本当にすげぇ。喧嘩の仕方も徹底的に粘る感じで、無敵のモンスターとはなっていないのが好印象。どんなに殴り返されても立ち向かい、最終的には倒す様子を引き目の位置から長回しで捉えるため、本気っぽさはかなりのもの。ちなみにアクション演出は実写パトレイバーや東京無国籍少女などの園村健介氏!

後半からは地元のヤクザものを殴り倒す様を見ていた高校生が遊びと称して、暴力旅行をするのだが、この高校生が殴るのは女や老人ばかりというクズっぷり。いつの間にかグラブルのCMに出るようになっていた菅田将暉が等身大のクズを全力で演じている。まぁ、巻き込まれてしまったキャバ嬢(小松菜奈がいい具合に地方でくすぶってる感を出している)も同様にクズなんだが。

個人的にグッと来たのは、一人では何もできないような高校生が暴力装置の主人公と出会って旅をするキャラクター配置。筆者が実写化を願っている漫画「ワールド・イズ・マイン」のトシモンのコンビと重なるのだ!ワールド・イズ・マインの一巻にあったような、相手にしてもらえない少年がキレるシーンもある。菅田将暉の「無視すんなや!」はトシの「なんで相手にしてくれんのや!」と重なる(筆者が勝手にシンクロさせていただけだが)。「ワールド・イズ・マイン」の実写化と思ってみるのも面白いかもしれない。

四本目『SHARING』
sharing

3・11以前に震災の予知夢を見ていたと語る人々、宮城で死んだはずの恋人との邂逅、震災を舞台で描こうとする大学生など、2011年3月11日以後を題材とした作品。

震災で直接の被害をこうむっていない多くの人々(筆者震災当時は神奈川県の自宅で震度5強を経験した)は、震災で大きな被害をこうむった東北の人々の痛みを共有することはできるのだろうか?それが本作のテーマの一つだとは思うが、そういった社会的なテーマは抜きにしてサイコサスペンス映画として見ても傑作だ。私が見たのは10分ほど追加があるロングバージョン。ロングバージョンは短いほうよりも異常な場面が多いらしく、事実、後半から増えていく夢と現実が交錯していく場面や謎の男が放つ異様な雰囲気、二か所ほど挟まれるとんでもない場面(本気で驚いた)など、異様なものを見ている感覚が凄まじい。こういった異常な場面が3・11以後の人々が抱えている、いつ来るともしれない災害、信用できない他者(愛国番組が増えていることの意味を考えればわかること)といった、そこはかとない不安感を表現しているともいえるだろう。

文章で説明しきれるタイプの映画ではないので(言葉で表現できないことを表現するのが映画なのだから、映画度がそれだけ高いということでもある)とりあえず見てくれ。後半の舞台の発表の場面やスプリットスクリーンのシーンは演技・編集ともにテンションが高い!DVD化の予定もないので、上映があったら逃さずにみること!関東では6月から横浜で上映がある。

五本目『ヒメノア~ル』
himenoar

古谷実の同名漫画が原作。

清掃のバイトで暮らしている青年がバイトの先輩に頼まれてカフェ店員のかわいい子とのキューピット役となるが、逆に惚れられてしまい、先輩に黙って付き合うことになる。それを知った先輩はショック!ってラブコメかよ!!と思われた方、それは大間違いだ。あるタイミングでタイトルが出るのだが、そこから本作は一気に狂気を見せ始める。劇場では前半で起こっていた笑いが激減したのが印象的だ。俺は後半でも笑っていたけど(笑)

カフェ店員の子は以前からストーカーに付きまとわれていた。そのストーカーがV6の森田剛演じる森田なのだが、彼は単なるストーカーではなく、連続殺人犯だったのだ。邪魔な人間は容赦なく殺す。包丁をグッサグッサと突き立てまくる森田くんの顔はガチである。『サイコ』のノーマン・ベイツ的な性行為の代理としての殺人のようでもあるのが余計に怖い。「底辺の人間は一生底辺なんだよ」と語る場面の緊張感もかなりのものだ。とにかく、その辺に歩いてそうなブルーカラーな感じが怖い。一人暮らしの人(特に女性)はこういう奴には本当に気を付けたほうがいいよ。夜道で襲ってくるのはこういう奴。

ちなみに、本作にはアイアムアヒーローの特殊メイクを手掛けた藤原カクセイ氏が参加している。刺した後のエフェクトも担当しているのだろうが、一か所特殊メイク的に面白い場面があるのでそこも見逃さないように。

後半からラストにかけての畳みかけ具合が素晴らしく、満足度の高い作品だったが、気になったのは、女優のおっぱい露出がないこと。馬鹿かと言われそうだが、最近の日本映画は中途半端に脱がしている例が多すぎて本当にイラつくんだよ!性描写はあるし、露出は多いのに、なぜか肝心のところは映らない。その流れは普通映るよね?ってところでもなぜかカットが切り替わったり、手で隠していたり、カメラがよけたり、って不自然すぎるぞ!本作でもどう考えても見えるって場面で何故か映らない。っていうか終盤のあれは変すぎだよ!どう考えても事務所NGとかだよね?本人NGだったら映画をなめすぎだ!!オラ、ここだけは譲れねえぞ!!!

以下は未見の作品、もしくは未公開の作品なのでざっくり一言だけ。

六本目『シマウマ』
公開中。
須賀健太が子役イメージを払拭するために思い切って暴力映画で怪演!しかもその暴力も容赦なし、とのことで、見たくて仕方ない。若手俳優が暴力映画に出るケースがどんどん増えている。いいぞ、もっとやれ!

七本目『クリーピー』
黒沢清の新作がホラー、しかも常連の香川照之が怖い人を演じるとなったら見るしかないっしょ。
しかし、香川照之と西島秀俊の組み合わせってしょっちゅうみるなぁ・・・

八本目『日本で一番悪い奴ら』
グッドフェローズ的な成り上がりストーリーとのうわさを聞いて期待値が急上昇している。

九本目『FAKE』
佐村河内事件のその後に迫ったドキュメンタリー。エンタメ映画ではないはずだが、面白そうならなんでもええやろ!その後の佐村河内守に密着した唯一の映像作品。

十本目『貞子vs伽椰子
ギャグみたいな題材だが、監督が「コワすぎ!」シリーズの白石晃士とのことなので、『フレディVSジェイソン』のような良質なホラーエンタメ映画になっているのではと期待。

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