雑多庵 ~映画バカの逆襲~

管理人イチオシの新作映画を紹介するブログです。SF、ホラー、アクション、コメディ、ゲーム、音楽に関する話が多め。ご意見・ご感想、紹介してほしい映画などあれば「Contact」からメッセージを送ってください。あと、いいお金儲けの話も募集中です。

大ヒット中のシン・ゴジラは今年の邦画No.1ヒットも見込めるとか。

前回の投稿で傑作だと申し上げましたが、実は文句もいろいろ言いたい作品でもありました。
今回はその文句を少し書いておこうと思います。 あくまで個人的な戯言に過ぎないため、批評とも言い難いものとなるでしょう。

godzilla


ちなみに、以下はネタバレを含みます

広告
 
まずはシン・ゴジラの好きなところ(というより特徴か?)を書いておきます。

1.怒涛の高速展開

ギャレス・エドワース版ゴジラのようなゴジラがなかなか出てこなくてモヤモヤする感じではなく、 開始数分で登場させ、序盤から本題に入る速さが良かった。『パシフィック・リム』でも近いことが言えましたが、映画に前置きは必要ありません。ゴジラが出現したことによる街の騒動と、手続きに手間を取られている政府首脳陣の会議のシーンを対比させることでの緩急も効果的だったと思います。終始早口で発せられるセリフと細かいカット割りによる体感的な早さはなかなかのものです。

2.抽象化された怪獣の怖さ

今回のゴジラは序盤から行動が読めない感じが良かったと思います。狙ったものだと思いますが、初上陸時第二形態の何とも言えずキモイかつ間抜けなデザインのショックはなかなかのものです。それにエラっぽい部分から出ていた赤いアレなんですかね?笑 あのキショい感じからの第三形態、そして第四形態の重量感のある黒々とした姿。進化していく生物としてゴジラを描く発想はいままでなかったと思うので、これには驚いた。今まで何本もゴジラ映画は作られていますが、本作のゴジラが最も謎の生命体っぽさが出ていると思います。そのわけわからない存在が街を焼き尽くしていく様は美しく、恐ろしいものでした。

3.庵野秀明の特撮愛と俺流演出全開っぷり

文字を画作りの一部として活かす演出は庵野監督がエヴァンゲリオンや『トップをねらえ!』(ラストのあれ)などで見られるものですが、シン・ゴジラでも序盤からそれはフルに発揮されています。場面によっては文字が画面を埋めるほど。セリフ量と合わさって情報の洪水状態です。市川崑(金田一シリーズが有名ですね)からの影響だそうですが、ここまで過剰にするのもなかなかです。初見ではセリフも文字も追いきれないと思います。

庵野監督は超オタクな監督としても有名ですが、エヴァ新劇場版にもあった昔の特撮映画から効果音を引用する手法や、伊福部昭の音楽をそのまま引用するなどオタクらしいこだわりが全開です。この音を引用する手法は学生時代の作品から用いていたようですね。なにせ自主映画で『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』を撮り、しかもウルトラマン役を自ら演じた人です(ウルトラマンスーツではなく、色を付けたウィンドブレーカーを着た監督がそのまんま出てきます笑)。 冒頭の60年代の東宝ロゴや、ゴジラ一作目へのオマージュとなったオープニングなど好きなんだなぁ、という感じがとても伝わります。それでいて押しつけがましくて古臭いだけのオマージュともなっていないところが好印象。第四形態上陸時にかかるテーマ曲にはおおっ!となりました。あのタイミングはばっちり。

あと、終盤のヤシオリ作戦(作戦展開まで含めてヤシマ作戦っぽい) での東京という街を活かした電車攻撃、高層ビルによる封じ込め作戦など思い切ったアイディアが面白かった。とにかく自由に監督の見せたい絵を展開しまくっているところがいいですね。絵コンテで庵野総監督、樋口真嗣監督、鶴巻和哉さん、前田真宏さん、摩砂雪さんといったアニメ界のトップクリエイター、というよりエヴァ関連の人が参加したことも大きいのかもしれません。

まとめて言うと、面白い絵やショックを提供してくれ、なおかつ先人たちへの深いリスペクトも感じられる庵野監督
らしいゴジラ映画と感じました。すっかりゴジラはキャラクター化されたものとして浸透していますが、ゴジラを抽象的で恐ろしい存在として描いたことで、ゴジラ映画を格調高いものとしようとしていることが伺われたのも面白いところです。シリーズを重ねるごとに人間っぽさ(?)も出てきたゴジラでしたが、本作によってイメージを刷新できたと思います。

ここからは文句の部分。
戯言ですので無視していただいても構いません。

1.この映画にはドラマはない

いきなり批判されそうなことを書きましたが、シン・ゴジラにはドラマ性がほとんどありません。ゴジラの出現に対して人類がどう対応するかといった「物語」は存在しますが、人々の葛藤や対立といったもので構築される「ドラマ」はほとんどないのです。それは登場人物のバックグラウンドがほとんど提示されないこと(それらしい場面がないだけで描かれている!という意見があることは知っています)、組織に属するメインの人物が段取り主義に対する疑問を少しは言いつつも、それによる苦労が特になさそうに見えることによると思います。登場人物がエリートですから(官僚になるような人は基本的に東大卒のエリートです)、なんでもスムーズにこなせてしまっている気がします。スピード感を優先させるためなのか、対比となる嫌な上司や現場で作業する人物などが全然出てこないのもドラマ性を希薄にしている要因だと思います。
庵野監督が大好きな『沖縄決戦』では様々な人物が様々な思いを持って総力戦の事態に向かっていったのかを高速展開の中で描けていました。一作目のゴジラでは、怪獣を殺せる強力な兵器を発明してした博士が、兵器が後の世に悪用されることを恐れて 葛藤、その末に自らを犠牲にすることで兵器の記録と記憶を抹消する、というドラマがきちんと描かれていました。映画にドラマは必ずしも必要ではありませんが、観客の心を動かすのはやはりドラマだと思います。エヴァンゲリオンだって思春期にありがちなウジウジした悩みを抱えた少年が、悩み続けた末に他者を肯定できるようになる、というドラマがあったからこそ面白くなったのではないでしょうか?

2.この映画に死はない

犠牲者が大量に出ていることは初上陸の様子や、 放射能を吐くシーンで十分にわかりましたが、犠牲者の存在がほとんど見えてこないのは気になりました。一作目のゴジラ(1954年)では戦後からそれほどたっていない作品らしく、「もうすぐお父さんのところに行けるからね」と子供に語り掛けながら死んでいく家族の様子が描かれています。私にはその場面が強烈な印象として残っていて、ゴジラの無差別破壊ぶりを恐ろしく感じました(数年前に初めて見たんですけどね)。それに匹敵するだけの「死」がシン・ゴジラにあったかというと、疑問です。

東日本大震災のイメージが鮮明に呼び覚まされて怖い!という意見も耳にしましたが、そもそも本作を2011年の震災のイメージと重ねることは、それほど面白い見方とも思えません。あの震災ではいまだに苦しんでいる人がいらっしゃるし、政府もそんなに素早く動いてくれたとも思いません。第一、誰々が行方不明で何人亡くなった、という多くの人々が犠牲になった事実が報道ではっきりと示されています。震災直後の報道では津波に流される人もライブ映像で示されたそうですが、そういったショッキングな場面はほとんどありません。ヤシオリ作戦で前線で犠牲になる人々の様子もわかりません(実務をこなす現場の人間自体ほとんど描かれていません)。こうした見えてこない犠牲者の存在を描くことには力が割かれていないのです。確かに人が死にまくる映画をメジャーの超大作でやることはレイティング的にも難しいものがあったと思いますが、もう少し「死」に誠実に向き合ってほしいと個人的には思いました。その点、金子修介監督の『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(通称GMK)では死を描くことに注力していたのがとても良かった。GMKはゴジラシリーズの中でも傑作だと思うので、気になった方はぜひ見てください。

私が怪獣映画において「死」や「破壊」にこだわる理由は、一つにはリアリティを重視していることが言えますが、怪獣が自分の街に現れて破壊の限りを尽くす様を妄想するのが好きなのも挙げられます。 ウルトラマンなり、ゴジラなり、多く怪獣映画で私が最も注目するのは怪獣による大破壊と殺戮なのです。ウルトラマンと怪獣の対決場面も面白いですが、それ以上に私が求めるのは無駄な破壊と殺戮です。怪獣にすべてを破壊してほしいと妄想することは健全な少年少女ならば当然なことだと思っていたのですが、そうでもないのでしょうか?とにかく、個人的な趣向として、怪獣には徹底的に破壊をしてほしいのです。そこに高い建物があればとりあえず壊してほしいのです。ゴモラの大阪城破壊とか最高じゃないですか!!だからシン・ゴジラで東京を焼き払う場面はかなり好きです。

というわけで、シン・ゴジラは傑作と言いましたが、少し不満もある作品となりました。ただ、面白いことは間違いないので、もう一回は映画館に見に行くと思います(すでに二回、IMAXと通常の劇場で見てますが)。 今度は『魔法少女まどかマギカ』や『PSYCHOPASS』、ニトロプラスのエロゲーのライターとして有名な虚淵玄脚本によるアニメ版ゴジラもあります。ハリウッド版の続編の話もありますし、しばらくはゴジラ関連の話題が途切れそうにありませんね。東宝にはこの勢いでゴジラをまたシリーズ化してほしいものです。

↓ランキングに参加しています。クリックで応援よろしく!
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 
スポンサードリンク


コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット

トラックバック