雑多庵 ~映画バカの逆襲~

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先日紹介した『君の名は。』の後編です。

あらすじの紹介や新海作品の特徴については前回書いたので、今回は感想や考察を中心に書いてみます。

今回は結末についても触れます。映画を見たことを前提に書きます。
本作は後半の展開を知らずに見ることが重要な作品です。おそらく見終わった後はもう一度見たくなるはず。

だから、知らずに見ることで得られる感動のためにまずは映画館で体験してください。事前に知っておくべき情報は前回の投稿で十分かけていると思いますので。

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冒頭の流星が流れる夜空、そこに重ねられるナレーション。

いつも通りの新海作品かぁ?と思いつつ見始めたのですが、「それは美しかった」とシンクロする三葉と瀧のナレーション、スッと息を吸う音から始まるRADWIMPSの「夢灯籠」と同時現れるタイトル。そして始まるタイトルシーン・・・ 

もう、この時点でやられた!と思ってしまいました。音楽が流れるタイミング、ナレーションの切れ味、タイトルの現れ方、そのどれもが過去最高レベルです。タイトルの現れ方や音楽で言えば、『秒速5センチメートル』の最終章での山崎まさよしの名曲「one more time one more chance」が印象的ですが、本作はそれを上回るぐらいに見事なタイミングで音楽を使っています。劇伴も含めて音楽を担当したRADWIMPSの新曲がうまくはまっているんだコレが!歌ものは4曲流れますが、物語が大きく動く場面で使われているので、印象に残るし、自然と気分が高揚していくんですよ。そうやって観客の気分をドライブさせつつ、モノローグの使用は控えめにした会話とアクションで見せていく緩急の利いた演出。ぼくが新海誠に対して抱いていた地味な印象が本作では一気に払拭されました。

最近あまり見なくなったタイトルシーンを入れているのも好印象です。タイトルシーンはこれから始まる映画を紹介するための導入としての映像であり、後の展開のヒントともなるものなのです。娯楽映画にはタイトルシーンが付き物だと思っていたのですが、最近はハリウッド映画でもあまり見なくなりました。だからこそ、新海監督がメジャーの初進出作でこういった娯楽映画の王道オープニングを選択したことに驚きました。ここだけでも監督が本作を娯楽大作としようという本気度が伺えます。

楽曲の歌詞が見事に内容にリンクしているのもいいですね。映画のために書かれた曲だから当然ともいえますが、冒頭の「夢灯籠」だけでも、「五次元にからかわれて」とか、「また”初めまして”の合図を決めよう」といった後半の内容を示唆するものになっています。歌詞による演出も巧妙なので、もう一度見ることがあったら歌詞にも注意しつつ見てみることをお勧めします。

メジャーの予算で制作したためか、いつも以上に絵のクオリティが高くなっていたのも印象深い。
メイン作画監督には、日本一(世界一か?)絵に関してうるさいアニメ監督宮崎駿と何度も組んできた安藤雅司さん。キャラクターデザインに「あの花」や「心が叫びたがっているんだ」といった今一番売れているタイプの絵を描く田中将賀さん。さらにクレジットを見ると、黄瀬和哉さんや沖浦啓之さんといった押井守作品への参加でも知られるProductionI.Gの看板アニメーターまで参加しています。他にも有名どころのアニメーターが多く参加していますが、そこまで詳しくないので割愛。背景のほうが表情豊かに見えることもあった新海作品ですが、本作ではこういった実力のあるアニメーターの力によってキャラクターの動きによって見せていく方向性となったのだと思います。結果、背景も撮影もアニメーションも一級の作品となりました。ビジュアルに関しては文句なし。


ここからはネタバレ全開です。

結末に関しても書きます。

 
ビジュアルに関して満点だと思いましたが、それだけでなく、物語としても見事な語り口でした。

監督自身、「星を追う子ども」のころから物語について考え直したそうで、その成果は『言の葉の庭』での和歌をベースとしつつ、秘密を抱えた女性の正体を明かしていく構成の妙に現れていました。それをさらに推し進め、序盤から結末を予見させるシーンを混ぜつつ、後半に二人の出会いが時間を超えたものでもあったと提示するショック。しかも、三葉は彗星の落下によって数百人の町の住人とともに既に死んでいるのです。これには、ぼくも驚きました。まさか、こんなにスケールの大きい展開をするとは・・・・・・。なんとしても三葉に出会うため、瀧は時を超えます。そして、ついに「かたはれどき」に出会う二人・・・・その後のクライマックスのアレは反則だろーーー!!

本作を見ていて思い出した映画がいくつかあります。
それは『バタフライ・エフェクト』と『ある日どこかで』。どちらもタイムトラベル映画の傑作だと思います。

『バタフライ・エフェクト』は日記の文面を読むことで過去に戻れることになった青年が、少年時代に犯した過ちを修正し、幼馴染の女性を救うことを目指す物語。
『ある日どこかで』は作家の主人公がパーティの席で見ず知らずのお婆さんに声をかけられます。お婆さんから渡されたものが何かわからないままに、お婆さんは亡くなってしまいます。 その後訪れたホテルで見かけた女性に一目ぼれした青年は、その思いの強さから写真が撮影された数十年前にタイムトラベルを果たします。お婆さんは青年とこの時に出会っていたのです。

ラストはどちらの作品も切ない印象を残して終わります。どちらもハッピーエンドなのかもしれませんが、 こうなるしかないのかと、やや諦めの感覚もあります。新海監督の『秒速5センチメートル』でも男が女と再会することはありませんでした。

しかし、『君の名は。』そうしたセオリーをも乗り越えようとします。彗星の事件から5年たち、互いの名前も入れ替わりの記憶も失った二人でしたが、どこかで出会った記憶を手掛かりについに出会うのです。身体が入れ替わりながらも本当の意味で出会うことがなかった二人が、生きた時間にズレがあり、記憶を失った状態でも出会うことができたのです。これだけのドラマがあったからこそ、最後の出会いのシーンは素直に良いものだといえました。

監督の舞台挨拶つきの上映で見たのですが、監督はこのラストについて「震災があったことが影響している」 と言っていました。それを聞いてなるほどと思ってしまいました。彗星が落ちた町は瀧が訪れた時点で3年が経っていたのに誰も住むものはなく、廃墟が広がっています。立ち入り禁止のテープやバリケード、横転した電車の車両。この風景に見覚えのある人は多いでしょう。図書館に残る犠牲者の記録に残る何百人の名前の存在も印象的です。「君の名は」と名前を呼び続ける本作は若い二人の出会いの物語ではありますが、震災や戦争などで理不尽な死を迎えた方々の存在を忘れるなとのメッセージも二人に託していると思います。死者の存在、土地に残る影響など、シン・ゴジラでおろそかにされていた要素が本作には確かに感じられました。この点において、本作は痛みに誠実な映画だと思っています。

と、いうことで二回にわたって紹介した『君の名は。』は大ヒット上映中です!
小説版もサントラも上映も大好評という、すさまじい売れっぷり。アニメ好き、映画好きしか知らないはずだった新海誠は、もう雲の向こに行ってしまったのか!!俺たちの新海誠だったはずだが、今やメジャーの大ヒット監督ですよ・・・すげぇなぁ。

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