雑多庵 ~映画バカの逆襲~

管理人イチオシの新作映画を紹介するブログです。SF、ホラー、アクション、コメディ、ゲーム、音楽に関する話が多め。ご意見・ご感想、紹介してほしい映画などあれば「Contact」からメッセージを送ってください。あと、いいお金儲けの話も募集中です。

ここ数年は毎年帰省と合わせて行っているカナザワ映画祭ですが、今年で10周年にしてファイナルなんだそうな。

なんでも、会場となっている都ホテルが改装になるとか、なんとかでセミナーホール(旧ロキシー劇場)もなくなってしまうとか。他にキャパや設備的にいいところが見つからないらしく、今年で終わってしまうと。

だからなのか、今年のカナザワ映画祭は例年以上に狂ったラインナップ、狂った日程で開催された。
9月17日~9月25日の9日間、朝から晩までぶっ続け、50本に及ぶ上映作品!!

と、いうことで色々見てきたので簡単にレポートをば。

9日間すべて行ってくることはできておらず、参加したのは17・18・24日の3日間。

その三日間は朝から晩まで見ており、トータルで14本見た。

・17日

初日は内田裕也特集。

一本目
滝田洋二郎監督、内田裕也主演・企画・脚本の『コミック雑誌なんかいらない!』 
no_more_comics
人気キャスターの内田裕也がロス疑惑、日航機墜落、おニャン子クラブなどその当時世間を賑わせていたものに突撃取材! 「恐縮です」と言いつつも、社の命令で強引な取材を連発した末に疲弊しきった裕也さんが放つ「I can't speak fucking Japanese.」が最高にかっこいい。このラストの一言を聞くためだけでも見る価値がある作品だ。80年代の日本の雰囲気を映し出した作品でもあると思うので、そういう観点で見ても面白いと思う。

二本目
『YUYA WORKS』と題した裕也さんプレゼンツの映像集。

冒頭は1985年のパルコのCM。ハドソン川を泳ぐ!
 

続いて裕也さんがパリをひたすら走る「RUN FOR PARIS」。裕也さんがシャンゼリゼ通りをエディット・ピアフの歌声に合わせて駆けていく様を画質最悪のビデオで撮影した映像が何故か美しく見えた。不思議と飽きずに見入ってしまう。
締めは裕也さん主催の年越しイベント「ニューイヤーズ・ワールド・ロック・フェスティバル」のオープニング映像。カリフォルニア、福島、天安門広場、韓国など世界各地で自転車をこぎ続ける!
泳いで走って自転車をこぐ、というトライアスロンな映像集だった。単に泳ぐだけ、走るだけ、自転車をこぐだけでも面白い映像は作りうるとよくわかった。
上映後には裕也さんのインタビューと伝記的小説をハイブリッドにした『JOHNNY TOO BAD 内田裕也』を著したモブ・ノリオさんと、裕也さんによるトークショーも開催。ストーンズの曲に合わせて踊る裕也さんを見られただけでもいいのだが、トークの予定を無視しまくった暴走しまくりのしゃべりっぷりも最高だった。進行を無視して締目てしまうところは本当に自由だなと。コントロール不能などこまでもロックなジジイだよ!!

 三本目
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』野外爆音上映@横安江町商店街

今回のカナザワ映画祭の主目的の一つ。
上映前には和太鼓演奏もあり、上映前から盛り上がる!

上映が始まると、野外でも容赦のない爆音だったのでさらに盛り上がる!
しかも、開始早々雨が降る! どんどん降る!!映画どころじゃない!!!
・・・とはならず、逆にアクアコーラが降ってきて4D感があっていいんじゃね?と逆に盛り上がる!
ややヤケクソ感もある絶叫上映状態にもなり、上映後には拍手喝さい、V8コールも起きる!サイコー!!

・18日

この日の初映画は映画祭ではなく、金沢のシネコンで『聾の形』。
朝9時の回で人がかなり入っていて驚いた。実際映画は大ヒット中。京都アニメーションの映画にこんなに人が入るなんて!見に来た人の半分は「涼宮ハルヒの憂鬱」も「けいおん!」も「氷菓」も「響け!ユーフォニアム」も見ていないんだろうなぁ。映画の出来はとても良かった。この作品については暇があったらまた紹介します。 

四本目
内田裕也初主演作『餌食』 
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長いアメリカ生活からレゲエサウンドとともに日本に帰ってきた男。昔の音楽仲間はすっかり商業主義に浸っちまった。それでも希望をもってバンドの売り出しを頼むものの、アイドルバンドで設けている連中にその気はなし。それだけでなく、昔の女をクスリ漬けにして洋パンに扱いしてやがる・・・てめぇらは許せねえ!腐った野郎どもに裕也さん怒り銃弾が炸裂する!!全編を通して流れるMATUMBIのレゲエ曲を爆音上映で聴くのは非常に気持ちのいいものだった。低音がトゥーマッチにならない程度にベースが響く。

 五本目
平山夢明原作の短編を容赦なく映像化『無垢の祈り』
inonocent_prayer

前売りで大入り状態だったが、当日は立ち見も出ることに。10月に東京での上映もあるが、一般上映はこれが初。
川崎の工業地帯に住む少女フミは学校ではいじめられ、近所のオヤジには性的嫌がらせを受け、家に帰れば、同棲中の男からの激しい暴力を受ける母親を見る、というこの世の底ともいえる日々を過ごしている。おまけにこのオヤジが性の対象としてフミを見ているから最悪だ。フミの過ごす地域では連続殺人鬼による犯行が起きているが、フミは犯行現場に通い、犯人へのメッセージを残していく。そして犯人に願う。「みんな殺してください」と。少女の無垢な祈りは届くのか。。。
原作は『独白するユニバーサル横メルカトル』に収録。原作の時点でどん底感が凄まじい作品だが、今回の映像化はそれを上回る救いのないエンディングだった。上映後に亀井亨監督と平山さんによる笑いに満ちたトークショーがあったため、かなり救われた気分になったが(フミ役の女の子にダメージを残さないように細心の注意を払った話は特に救いになる)、見た後はどよ~んとした空気が会場に漂っていたのが印象的だ。

六本目
2013年の期待の新人賞グランプリの『ハッピーアイランド』

雑誌の取材のために3・11後の福島を訪れた若者たちが、人喰い医師と遭遇する、という話。
商業映画ではほぼ不可能なエクストリームな拷問描写が見ものなホラー映画だ。 監督の清川隆さんは医者でレスラーで映画監督という変わった三足草鞋の人物。医師ならではのディテール豊かな拷問描写、特に一般には知られていないようなマイナーな器具を使った拷問アイディアが面白い。ゲロも中途半端に消化されたものが出てくるなど、非常にリアル。それでいて、食人オジサンのユーモアたっぷりな発言で爆笑させてくれるからサービス満点だ。「涙はチンコから流すもんじゃねぇ!」とか、「う~ん、クリーミーでマイルド!」といった名言を連発するので場内は頻繁に笑いが起きていた。

七本目
清川隆監督の新作屋敷ホラー『燈火』

拷問ホラーに続いて完成したばかりの新作は屋敷ホラー。亡くなった恋人の家を訪ねると、そこは寒村の古い日本家屋だった。そこで遭遇する恐ろしい事件を描いた幽霊話。怪談話に近い物語となっており、日本家屋の暗闇や家鳴りによる嫌な怖さをこれでもかというほど見せてくれた。『回転』が好きだという清川監督は蝋燭の明かりだけで闇を歩く女という、恐怖の場面を徹底。さらには、映画における危険物件「鏡」も効果的に使った演出にもビビらされた。 

八~十一本目
 トビー・フーパー爆音オールナイト

爆音上でトビー・フーパー監督作を四本連続上映。
『悪魔のいけにえ2』
爆音効果満点なオープニングで一気に元気になり、終盤のレザーフェイスとデニス・ホッパーのチェーンソーバトルのクレイジーっぷりに笑った。
『スポンティニアス・コンバッション~人体自然発火~』
これは初鑑賞。ところどころ寝てしまったのだが、終盤の何がなんだかよくわからん感じに圧倒された。人体発火の能力を持った主人公の悲劇的な話ではあるのだが、異常なテンションで押し切られる展開では終盤は話はどうでもよくなってきた。寝てしまったので見逃したところも多く、最初から見直したいと思う。
『スペースバンパイア』
マチルダ・メイの美しすぎる裸体が見逃せないSF超大作。爆音で聴くヘンリー・マンシーニによるテーマ曲がカッコよすぎる! そして本作もラストはとんでもないことになる!!

『マングラー』
こちらも初鑑賞。スティーブン・キングの原作をこれまたハイテンションに映像化。超絶ブラックな工場で働く女たちが悪魔が宿るプレス機に巻き込まれる!最後の超絶展開には驚いた。 

なんとか朝まで正気は保てたものの、トビー・フーパー監督の狂気に触れまくった一夜となった。

・24日

十二本目
地獄の戦場体験『プライベート・ライアン』

戦争マニアのスティーブン・スピルバーグが撮った第二次大戦体験映画。冒頭30分近くあるオマハビーチ上陸作戦のシーンは戦争映画やゲームの戦場表現を一新ほどの強烈さ。一瞬で死体が積み上がっていく様や人体が破壊されていく様を手持ちカメラの臨場感で描いた。これを爆音上で見ると本当に戦場に放り出された気分になる。サラウンドで響く怒声、悲鳴、銃声、爆発音。戦争経験者が見たらPTSDになるんじゃないかと思うほどだ。終盤のタイガー戦車の地鳴りでは体が震える感覚が味わえ、ジョン・ウィリアムズのスコアの素晴らしさも爆音で際立っていた。何度も見ている作品だが、劇場鑑賞は初だったので感動もひとしおだ。

十三本目
『戦争のはらわた』(ドイツ語吹き替え版)

サム・ペキンパー監督による男の傑作をドイツ語で。ドイツ軍を描いた作品なので、オリジナルの英語こそが嘘なのだが、ドイツ語音声となったことで自然な形となった。見ている間に違和感がゼロだったので、やはり、ドイツ軍はドイツ語をしゃべっていないとダメだと思った。

十四本目
『ハードコア』(原題:Hardcore Henry)

予告編の段階から期待していたロシア映画がついに日本公開!
全編主人公の主観視点でとらえた世界初(?)のFPA(First Person Action)映画だ。ゲームではよく見る画面なのだが、映画で、しかも全編をこれで作るなんてクレイジーにもほどがあるぜ。というわけで、ゲーマー的にかなり気になっていた。
お話はシンプル。妻をさらわれたサイボーグ兵士が悪の手から妻を取り戻そうとする。以上!
主人公ヘンリーが走ったり、銃を撃ったり、手りゅう弾を投げたり、殴ったりするのを100分ほどの尺に詰め込みまくったアクション度数の高さが特徴。バイオレンスは「DOOM」と同じぐらいに大袈裟です。走っているシーンは「ミラーズ・エッジ」のようだし、「コール・オブ・デューティー4 モダンウォーフェア」のスナイパーミッションをそのまんま再現したシーンもあった。ゲーマーほど楽しめることは間違いなしだ。主観映像で動きも多いので酔う心配をしている人もいると思うが、ゲームで慣れているからか、筆者は全然酔わなかった。面白いシーンがてんこ盛りの作品だが、Queenの名曲「Don't Stop Me Now」が流れるシーンが特に楽しかった。一般公開は来年4月。ゲーマー諸兄は期待して待っていてほしい!!

十五本目
クリスピン・グローヴァーのビッグスライドショウ&『It is Fine! EVERYTHING IS FINE.』
ItIsFine

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で主人公マーティのパパを演じたり、『13日の金曜日 完結編』でナイスな踊りと殺されっぷりを見せ、『チャーリーズ・エンジェル』で痩せ男(役名)を演じたりとエキセントリックな演技と存在感で知られている俳優のクリスピン・グローヴァーによるイベント。

『13日の金曜日 完結編』より踊るクリスピンさん


最初にクリスピンさんによるスライドショウがあり、ここで著作の朗読が行われる。身振り手振りを交えての朗読だが、本の内容は様々な文章をつなぎ合わせたり、既存の写真を使ったり、部分的に書き足したりしているモダンアートの一表現と言えるもの。だからすんなり頭に入っていくものではなく、パフォーマンスを見ている感覚が強かった。その後は監督作の上映。なんでも、作品単体の貸し出しは行っておらず、上映の際はスライドショウと上映、Q&A、サイン会をセットにすることを条件としているらしい。本人がいないと実現しないためか、日本ではカナザワ映画祭でしか上映されたことはない。
そして、映画だが、二本あるうちこの日は『It is Fine! EVERYTHING IS FINE.』だった。重度の障害を持つ男がセックスと殺害を繰り返すという話なのだが、不思議と感動させられた。脚本を書き、自ら主演したスティーブン・C・スチュワートさんの熱演と幻想的な演出が見どころだ。脳性マヒに似た障害で身体が自由に動かせず、発話に難があるため、誰からも理解されない男の孤独とフェティッシュな幻想。それはスティーブさん自身に重なる。オチになるような話だが、スティーブさんは撮影から一か月後に亡くなっている。まさに命を懸けて一人の男が作り上げた映画だ。これに心を動かされないでどうする。
その後のクリスピンさんのQ&Aコーナーでの真摯な対応は終了時間を大幅に遅らせ(笑)、Q&A終了時点で1時半になっていた。その後はサイン会もあり、筆者も書籍にサインをしてもらった。 

カナザワ映画祭のラストに忘れられない映画体験ができて本当に良かった。
これで終わりではもったいなすぎるので、いつの日か再始動することを願うばかりだ。

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