雑多庵 ~映画バカの逆襲~

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今回は田舎を舞台にした青春ものつながりということで、2013年の東京国際映画祭でも上映された日本映画の『ほとりの朔子』とアメリカ映画の『MUD-マッド-』を紹介します。

まずは、『ほとりの朔子』

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あらすじ
大学受験に失敗し、モラトリアム気分で浪人生活を過ごす朔子は叔母と叔母の実家へ遊びに行く。二週間の滞在予定の中、叔母の友人や、その高校生の甥と娘、近所のおばさんなどと交流していく。照りつける夏の日差し、静かに波が打ち寄せる海岸、川のせせらぎ・・・田舎のゆっくりと流れる時間の中で朔子は大人と子どものほとりをさまよう。

あらすじとは言っても、大したドラマがあるわけではないのでザックリとしか書けませんね。

以外とハード?
予告を見る限りは透明感のある、それこそ川のせせらぎのようなさらっとした青春ものなのかなーと思って見に行ったのですが、後半になるにつれて大人たちの過去や本心、ゲスい部分が分かってきたあたりから面白くなってきました!ある人物の発言が自分が期待していたものだったのでキターー!!思わず言いたくなりました。ちゃんと修羅場のような緊張感のある場面も出てきますよ!と人間の様々な側面を観客は朔子とともに観察していくこととなる映画となっています。

あの人も出演
観察する映画といえば、ドキュメンタリー作家の想田和弘さんの観察映画が有名ですが、本作はその観察映画のようなスタイルにも通じるものがありまして、朔子は大人たちを観察するばかりで自分が主体的に関わる部分はほとんどありません。そのあたりが面白くないと感じる方もいらっしゃるかと思いますが、観察映画と考えればありじゃないかなと。そのあたりのつながりからか、想田さんがチョイ役で出演してます!ちゃんとセリフがあるので、顔があんまり分からなくても観察映画をこれまで見ていれば声でわかるかも?役どころ的にも『選挙2』を作った想田さんらしい(?)ので分かりやすいです。

二階堂ふみ
なんといってもこの映画の魅力は朔子を演じた二階堂ふみ!撮影時、17歳の彼女は朔子とほぼ同年代。『地獄でなぜ悪い』は本作と平行して撮っていたとか!リアルに若者が演じたからこそ感じられる不安定さがいいですね。映画自体に興味が持てなくとも、二階堂ふみの魅力を堪能するためのアイドル映画として見ることができるので、そういう見方もありかと。冒頭が朔子の顔のアップから始まるし、映画の設定が夏なので露出度が高い衣装や水着姿がたくさん拝めるから、監督も狙ったはずです!とりあえず川辺で朔子がたたずむ画を見るだけでマイナスイオンを感じられるので、癒されたい人にお勧めします!

次は『MUD-マッド-』

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あらすじ
アメリカ南部、ミシシッピ川にある無人島へ洪水で木の上に引っかかったボートを見に来た14歳の少年ふたり組。ボートは持ち主がいないはずだった。だが、先客がいた。くわえ煙草で色黒、拳銃を持った男は明らかに怪しく、マッド(=泥)と名乗った。マッドは町にいる女を待っているといい、それまでボートは自分のものだと主張する。ボートを手に入れるため、男に食料を運び、町にいるという女に伝言も伝える。何度も会ううちに次第にマッドと少年たちは仲良くなっていったが、町ではマッドが警察に手配されていた。マッドは何者なのか・・・

アメリカ人の心
舞台となっているミシシッピ川はアメリカ文学を代表する作家マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険(1876)』『ハックルベリー・フィンの冒険(1885)』などの舞台ともなっています。この二作の小説はアメリカ人の心が詰まっていると言われており、アメリカ人の開拓精神や中西部のの文化などが反映されたあまりにも有名なものです。『MUD』はこのマーク・トウェインの作品世界をベースとしており、南部の田舎臭い風景と少年たちの冒険といったエッセンスを活かした現代劇にしています。少年二人組がトム・ソーヤーとハックルベリー・フィンを意識したようなキャラクターになっています。やんちゃでハックルベリー・フィンのようなネックボーンはえーかげんな叔父と暮らし、もう一人のエリスはボートハウスで両親と暮らし、両親に対しては敬語で応答します。キャラクターの分け方に意識を感じました。

マコノヒー!
本作で胡散臭さを発散させまくるマッドを演じるのはマシュー・マコノヒー。最近は『ペーパー・ボーイ』や『マジック・マイク』など出演作の日本公開が連発しており、大幅な減量を敢行して挑んだ『ダラス・バイヤーズ・クラブ』ではアカデミー賞も有力視されています。マコノヒーといえば、映画内やプライベートに関わらず脱ぎたがる人として有名ですが、本作も例外ではなくシャツを脱ぐ場面があります!もう44歳なのにね!(笑)

大人にはいろいろあるんです

本作と『ほとりの朔子』の共通点は田舎映画であることと、子どもから見た大人たちの話であることです。『MUD』に出てくる大人たちは皆、何かしらダークな側面もあり、単なる「いい人」ではありません。人間の複雑さが『ほとりの朔子』、『MUD』両作品では表現されています。『MUD』は14歳の少年の目線なので愛について純粋に考えてしまう少年の心理も表現されています。、エリスは年上の女の子に背伸びして勘違いの恋愛をしてしまったり、ケンカばかりの両親は愛し合っていないのかと思ってしまったりします。そんな少年たちが大人たちの複雑さを知って少し成長する、そんな映画になっています。田舎臭くて退屈な映画になりそうな話ですが、マシュー・マコノヒーの怪演によって胡散臭い面白さが持続し、後半には田舎ならではの血なまぐささも感じる作品となっています。
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