雑多庵 ~映画バカの逆襲~

管理人イチオシの新作映画を紹介するブログです。SF、ホラー、アクション、コメディ、ゲーム、音楽に関する話が多め。ご意見・ご感想、紹介してほしい映画などあれば「Contact」からメッセージを送ってください。あと、いいお金儲けの話も募集中です。

1月30日より公開だが、試写で観てきたので少し早めに紹介。

『エイリアン』(1979)『ブレード・ランナー』(1982)などといった映画史に残る傑作から、『プロメテウス』(2012)『悪の法則』(2013)といった賛否両論を巻き起こす作品まで様々だが、70代後半となった今でも精力的にエッジの利いた作品を作り続ける映画作家、リドリー・スコット。今回紹介する『エクソダス 神と王』は彼の作品史上最大の予算(約150億円)を投じて作られた超大作である。

Exodus-Gods-and-Kings-Poster-Bale-and-Edgerton.jpg



物語は旧約聖書にある「出エジプト記」が基になっている。

エジプト人ではヘブライ人(ユダヤ人)が奴隷として厳しい生活を送っていた。そのヘブライ人の状況を知り、自分がエジプトの将軍の子として育てられたものの、実はヘブライ人ということも知ったモーゼが、シナイ山で神の啓示を受け、ヘブライ人を導いてエジプトから脱出するという話。

この話の映画化といえばセシル・B・デミル監督による『十戒』(1956)が映画史的には一番有名
十戒

『十戒』のクライマックスはモーゼが神パワーで紅海を割り、エジプト軍の追手から逃れるというものだった。本作でも同じ場面はあるのだが、引き潮によって偶然起こった現象のようにも見えるのがポイントだ。

本作は全体の物語自体は『十戒』をおおむねなぞりつつも、神の存在を明確にしない。神の怒りのように見える天災の描写もたまたま起こった出来事であるかのように描写しているため、神の存在はけっこうボンヤリしていたりする。

一応、モーゼが出会う神として少年が出てくるものの、果たしてこの少年が神なのかも怪しい。そもそも神が少年の姿というのが胡散臭いし、シナイ山に行った際に岩で頭を打ったモーゼが見ている幻想でしかないのではとの考え方もできる。そう考えると、モーゼは実は狂人であって、神の啓示という妄想に取りつかれた結果、ヘブライ人を救うことになったと言えてしまう。この聖書の否定のような描写がまずかったのか、本国アメリカでは評価はいまいちな本作だが、宗教に関してえーかげんな日本人(少なくとも筆者)関係ない。

Noah.jpg
同じく聖書の偉人を狂信者的に描いた『ノア 約束の舟』(2014)。津波のシーンや嫌ーな感じの登場人物描写、PG-13であっても人間が踏みつぶされたり、大量に死にまくる描写があるなど、『エクソダス』と共通点が多い。


『ノア』天地創造を宇宙論と進化論を組み合わせて描き、カインとアベルの兄弟殺しを人類の暴力の歴史の原点として描く。一つのモーションに凝縮させた暴力の歴史のシーンはお見事。


宗教的な話を抜きにした楽しむポイントはディザスター映画としての見方。

序盤の『アラビアのロレンス』(1962)や『ベン・ハー』(1959)、さらにはリドリー・スコットの名作『グラディエーター』(2000)を彷彿させる生きた馬を実際に走らせ、大量のエキストラも導入した壮大な戦闘シーンもスゴイが、中盤からの次々と起こる天災のシーンのインパクトはかなりのもの。

大量のワニが(ナイル川にはワニがかなりいる)漁師たちを襲って川を血に染め、その影響で巻き上げられた泥によって魚が死にまくり、ハエが大発生といった一連のシークエンスを金を使いまくった圧倒的な物量(しかも3D!)で描く。その後もカエルの大群やイナゴの大群、大量の馬の死体など、とにかく数の力を感じる。『ブラックホーク・ダウン』でソマリア民兵の物量作戦と、圧倒的に不利な地獄の如き状況を戦うアメリカ兵を描いたスコット監督だが、本作では物量と地獄描写の記録を更新したといえる。特にラストの巨大津波の迫りくる絶望的な状況とその後の地獄の描写(3・11を経験した日本人には良く分かるはず)もスケールがデカい。このシーンは人間の小ささと対比されているので、ぜひとも映画館のなるべく大きなスクリーンで堪能されたし!

一人の狂人が起こした「奇跡」は、彼の勇気とハッタリによってなされたものだった。だが、そのあまりの事の大きさに人々は神の存在を信じた。そして、「奇跡」を起こした男も神を信じることで人々を導くことができた。信じることが信仰の基本であるとしたら、モーゼは信仰によって人々を救った。ただ、彼が信じていたのは彼の妄想の中に存在した神であり、この場合の神とは、モーゼ自身のヘブライ人を救いたいと思う良心、虐げるエジプト人への怒りなどの象徴だったのだ。つまりは自分を信じること、勇気をもって立ち向かうことでこそ、苦境を乗り越えられる。

いくらか解釈の仕方によって評価も別れそうな本作だが、管理人の解釈は以上のようなものとなった。これが正しいかは分からないが、一つの解釈としてありだと信じている。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村
クリックで応援よろしくお願いします!!

スポンサードリンク


コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット

トラックバック