花沢健吾による同名漫画の映画化。
東宝製作、漫画の映画化と言うと、いい思い出がない人が多いかと思うが、これは違う。
近年のメジャー大作邦画には珍しく、エンタメとしてのレベルが非常に高い秀逸な作品だ。
漫画家としての成功を夢見ていたものの、いくら持ち込んでもウケず、アシスタントとしてうだつの上がらない日々を過ごす主人公、鈴木英雄。ヒーローを名に持つものの、生来のヘタレ感が災いして恋人には愛想がつかされ、職場でもバカにされている。金はないが、夢は捨てきれず、夜な夜な趣味のクレー射撃用のショットガンを構えているばかり・・・・。
そんな日々が唐突に終わった。日本中で謎のウィルスが蔓延し、ゾンビがあふれかえったのだ!!
英雄はネットの標高の高いところならば安全とのうわさを信じ、道中出会った女子高生ヒロミとともに逃げる。
英雄はヒロミを守り、真のヒーローになれるのか!?
という話です。
ストーリー自体はゾンビ映画をたくさん見ている人にとっては真新しさはないのだけど、日本を舞台にした点が重要
アメリカは銃社会という前提があり、ゾンビが現れたとしてもとりあえず撃ち殺せばOKとの発想がある。
軍人でなくとも銃を扱える人は多いし、終末論者は自宅にシェルターを持っていたりする。非常時に対応できる人間は結構いるわけですよ。だが、日本の場合は違う。銃を撃ったことがある人はほとんどいないし、ましてや銃を持っている人間なんて一般家庭だとまずいない。それこそ、狩猟をやっている人か競技で撃つ人ぐらい。だからこそ、英雄は特殊な存在であり、ゾンビとの戦いで大活躍できるはずなのだが、なかなか撃たないんだこれが。
ヘタレな日本人を象徴しているような存在だから、非常時でもルールのことばかり気にしてしまう。
公共の場では銃を出してはNG、人に銃を向ける勇気もなければ、発砲もできない。フロイト的に読み替えて、銃=男のイチモツと考えるのもいいだろう。発射できないヘニャチンがいかにして男性性を得るのか。これが本作のドラマの中心となる。クライマックスでは溜まり切ったものを一斉発射する如く撃ちまくってくれるので、モヤモヤは見事に吹き飛んでくれる。安心せよ!!
本作はヘタレ野郎の成長物語として見て十分面白いと思うが、ゾンビ映画として一級なのだ。
特に序盤のゾンビ化した彼女との遭遇シーンはなかなか怖いものがある。関節が崩壊したキモイバービー人形的な動きで迫る様子は怖いぞ~。その後の街にゾンビがあふれるシーンの終末感も相当なレベルだ。『ワールドウォーZ』ほどの物量ではないにせよ、この前半の勢いはハリウッド大作にも負けていないと思う。
原作の雰囲気を十分に活かしたゾンビの造形も見事。ゾンビたちのバリエーション豊かな崩壊した顔がいい味出してるんだ。顔面崩壊メイクだけでも見どころ十分です。グロ耐性のない人にはこの時点でちょっとキツイかもしれないが、本作のグロ度はクライマックスに向けてヒートアップ!レーティングの問題や「大人の事情」もあるのか(R-15指定での上映)、同一画面内での首チョンパやトム・サビーニ的な臓物引きだし、皮膚破きといった描写はないものの、ドラマの『ウォークキングデッド』やジョージ・ロメロの作品を彷彿させる描写はあるし、頭部破壊に関しては通常のゾンビ映画の三倍ぐらいブチ込まれている。クライマックスでの大量湧きするゾンビに立ち向かう英雄(大泉洋がまたイイんだ!)がショットガンを撃ちまくるシーンは本当に良かった!ゾンビの死体が積み上がっていく様子はピーター・ジャクソン監督の出世作『ブレイン・デッド』もかくやというキルカウントぶり。この場面を見るためだけでもぜひ劇場に足を運んでいただきたい。手斧でゾンビを殺しまくる長澤まさみも素敵。
この辺りも見るとより楽しめるかと
基本的に超面白かった本作なのだが、少し問題もあって、有村架純演じるキャラクターが後半あまり活きていない。詳しく説明するとネタバレになりそうなので控えるが、あくまで「かわいい子枠」という印象があり、いなくてもいいんじゃね?と言いたくなる。設定的に終盤でも活躍できたと思うんだが、この辺りは「大人の事情」か!?
まぁ、不満がゼロではないが、最近の実写邦画のメジャー大作でここまでエンタメに徹した映画は久しぶりに見た。ある程度のグロ耐性は必要かもしれないが、様々な世代の人を楽しませることのできる一級の娯楽映画であることは間違いない。それはシッチェス映画祭(ホラー、SF系の映画祭として世界でも最大規模のもの)での観客賞受賞が証明されている。製作者のやる気が感じられないもの、面白さを勘違いしているもの、一部の人間にしか楽しめないものが幅を利かせる現在の邦画業界のことを考えると、本作はとても貴重な存在だ(アニメーション映画が売れているのは大衆娯楽としてエンタメ度の高いものを作っているからだ!)。本作が大ヒットすれば、邦画もかつての大衆娯楽に戻れるかもしれない。『ワールド・イズ・マイン』の映画化も実現するかも!
そういうわけで、『アイアムアヒーロー』お勧めです。
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東宝製作、漫画の映画化と言うと、いい思い出がない人が多いかと思うが、これは違う。
近年のメジャー大作邦画には珍しく、エンタメとしてのレベルが非常に高い秀逸な作品だ。
漫画家としての成功を夢見ていたものの、いくら持ち込んでもウケず、アシスタントとしてうだつの上がらない日々を過ごす主人公、鈴木英雄。ヒーローを名に持つものの、生来のヘタレ感が災いして恋人には愛想がつかされ、職場でもバカにされている。金はないが、夢は捨てきれず、夜な夜な趣味のクレー射撃用のショットガンを構えているばかり・・・・。
そんな日々が唐突に終わった。日本中で謎のウィルスが蔓延し、ゾンビがあふれかえったのだ!!
英雄はネットの標高の高いところならば安全とのうわさを信じ、道中出会った女子高生ヒロミとともに逃げる。
英雄はヒロミを守り、真のヒーローになれるのか!?
という話です。
ストーリー自体はゾンビ映画をたくさん見ている人にとっては真新しさはないのだけど、日本を舞台にした点が重要
アメリカは銃社会という前提があり、ゾンビが現れたとしてもとりあえず撃ち殺せばOKとの発想がある。
軍人でなくとも銃を扱える人は多いし、終末論者は自宅にシェルターを持っていたりする。非常時に対応できる人間は結構いるわけですよ。だが、日本の場合は違う。銃を撃ったことがある人はほとんどいないし、ましてや銃を持っている人間なんて一般家庭だとまずいない。それこそ、狩猟をやっている人か競技で撃つ人ぐらい。だからこそ、英雄は特殊な存在であり、ゾンビとの戦いで大活躍できるはずなのだが、なかなか撃たないんだこれが。
ヘタレな日本人を象徴しているような存在だから、非常時でもルールのことばかり気にしてしまう。
公共の場では銃を出してはNG、人に銃を向ける勇気もなければ、発砲もできない。フロイト的に読み替えて、銃=男のイチモツと考えるのもいいだろう。発射できないヘニャチンがいかにして男性性を得るのか。これが本作のドラマの中心となる。クライマックスでは溜まり切ったものを一斉発射する如く撃ちまくってくれるので、モヤモヤは見事に吹き飛んでくれる。安心せよ!!
本作はヘタレ野郎の成長物語として見て十分面白いと思うが、ゾンビ映画として一級なのだ。
特に序盤のゾンビ化した彼女との遭遇シーンはなかなか怖いものがある。関節が崩壊したキモイバービー人形的な動きで迫る様子は怖いぞ~。その後の街にゾンビがあふれるシーンの終末感も相当なレベルだ。『ワールドウォーZ』ほどの物量ではないにせよ、この前半の勢いはハリウッド大作にも負けていないと思う。
原作の雰囲気を十分に活かしたゾンビの造形も見事。ゾンビたちのバリエーション豊かな崩壊した顔がいい味出してるんだ。顔面崩壊メイクだけでも見どころ十分です。グロ耐性のない人にはこの時点でちょっとキツイかもしれないが、本作のグロ度はクライマックスに向けてヒートアップ!レーティングの問題や「大人の事情」もあるのか(R-15指定での上映)、同一画面内での首チョンパやトム・サビーニ的な臓物引きだし、皮膚破きといった描写はないものの、ドラマの『ウォークキングデッド』やジョージ・ロメロの作品を彷彿させる描写はあるし、頭部破壊に関しては通常のゾンビ映画の三倍ぐらいブチ込まれている。クライマックスでの大量湧きするゾンビに立ち向かう英雄(大泉洋がまたイイんだ!)がショットガンを撃ちまくるシーンは本当に良かった!ゾンビの死体が積み上がっていく様子はピーター・ジャクソン監督の出世作『ブレイン・デッド』もかくやというキルカウントぶり。この場面を見るためだけでもぜひ劇場に足を運んでいただきたい。手斧でゾンビを殺しまくる長澤まさみも素敵。
この辺りも見るとより楽しめるかと
基本的に超面白かった本作なのだが、少し問題もあって、有村架純演じるキャラクターが後半あまり活きていない。詳しく説明するとネタバレになりそうなので控えるが、あくまで「かわいい子枠」という印象があり、いなくてもいいんじゃね?と言いたくなる。設定的に終盤でも活躍できたと思うんだが、この辺りは「大人の事情」か!?
まぁ、不満がゼロではないが、最近の実写邦画のメジャー大作でここまでエンタメに徹した映画は久しぶりに見た。ある程度のグロ耐性は必要かもしれないが、様々な世代の人を楽しませることのできる一級の娯楽映画であることは間違いない。それはシッチェス映画祭(ホラー、SF系の映画祭として世界でも最大規模のもの)での観客賞受賞が証明されている。製作者のやる気が感じられないもの、面白さを勘違いしているもの、一部の人間にしか楽しめないものが幅を利かせる現在の邦画業界のことを考えると、本作はとても貴重な存在だ(アニメーション映画が売れているのは大衆娯楽としてエンタメ度の高いものを作っているからだ!)。本作が大ヒットすれば、邦画もかつての大衆娯楽に戻れるかもしれない。『ワールド・イズ・マイン』の映画化も実現するかも!
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