「峰不二子という女」に始まったルパン三世のリブート企画LUPIN THE IIIRDの第三弾。
『天元突破グレンラガン』や『キルラキル』の監督でアニメーターの今石洋之さんが大層褒めていたこともあってみた。
ルパン三世における石川五エ門と言えば、「またつまらぬものを斬ってしまった」のキメ台詞とともに車やら戦闘機やら、挙句の果てにはミサイルまで斬ってしまう斬鉄剣の使い手として知られている。その斬りっぷりはもはや曲芸に近いものがあり、あまりにつまらぬものを斬り過ぎたためか、最近のシリーズではルパン一味のギャグ要員となってしまっている。
しかし、本作の五エ門は違う。
まだ、ルパンたちと出会ったばかりでつまらぬものを斬る境地に達する前の若く、未熟な五エ門だ。
自分の能力を過信しているところがあるし、自分より強い存在の出現に打ちのめされてしまう。
そこからいかにして真の達人へと成長するかを描いた作品だ。最近のシリーズで失われていた”サムライ”五エ門をひたすらカッコよく描くためのキャラクターデザイン、レイアウト、アニメーションが素晴らしい。
原作の渋くてエロい雰囲気を意識したような本リブートシリーズでは全体が劇画調のデザインとなっている。峰不二子はいつもと違う髪型だったり、帽子を被っていない次元が見られたりと、従来のキャラクターでも遊びの利いたデザインだ。オリジナルキャラクターのヤクザたちも皆イイ顔していて東映の映画的な雰囲気もあって見ごたえ十分。音楽も大野雄二のものにはとらわれずに新たなルパン的な音楽を作ろうとしているところが良かった。
そして、なんといっても後半の50人切りである。
覚醒した五エ門がヤクザたちを一瞬で斬る!迷うことなく敵を斬り捨て、画面を血に染めていく斬りっぷりが痛快極まりない。
首を飛ばし、腕を落とす。さらには切断面も見せる丁寧なゴア描写に三隅研二監督の子連れ狼や、勝新太郎の座頭市にあったサムライ映画の本来的な楽しさを見た気がした。やはり、サムライ(侍と書かないのは映画における存在であって、海外の人がイメージするところのSamuraiという意味で使っているためだ。)は斬りまくってスクリーンを血に染めてこそだ。海外で五社英雄や黒澤明、子連れ狼などが人気な理由は、その徹底した暴力描写による娯楽性によるものが大きいと思う。
そういうわけで、正しくサムライ映画な『血煙の石川五エ門』はルパン三世シリーズの中でも飛びぬけた完成度を誇り、アニメーション映画としてのクオリティや風格も十分な傑作だ(原画には「カリオストロの城」で序盤のカーチェイス描いた名アニメーターの友永和秀さんや、細田守作品の常連の山下高明さんも参加!監督自身も「REDLINE」の監督や「アニマトリックス」への参加で世界的にも知られている小池健さん)。OVAとして作られて、限定上映のため、1時間程度と短いが、劇場で見る価値のある一級の作品なのは間違いない。思わず劇場限定発売のBlu-rayを買ってしまったほどに気に入っている。こちらのBlu-ray、スリーブのデザインがかっこいいのでお勧め。
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