今月は見たい映画がたくさん公開されているのですが、なかなか時間が足りず(お金も足りず・・・)、すべては見られていない状況です。
ただ、これだけは見ておかねばと思うものもありまして、それが今回紹介する三本の韓国映画と台湾映画の再上映です。いずれも時間を使う価値のある力作ばかり。ぜひ、劇場に足をお運びださい。
まずは『お嬢さん』
『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』の復讐三部作、原題の韓国を舞台にした吸血鬼映画『渇き』など、徹底した暴力や重いテーマを描きつつも、美しい画面構成や音楽で格調高い作品を作り続けているパク・チャヌク監督の新作です。
本作の舞台は日本統治下の韓国。日本人の金持ちの家に結婚詐欺のために女中として忍び込んだ女と、仕えることとなった「お嬢さん」、 女を送り込んだ詐欺師の男との間で繰り広げられる騙し合いを描いたものです。こう書くと、シリアスな映画なのかなと思いますが(予告編だけ見るとシリアスな印象が強いと思います)、実際はユーモアたっぷりのコメディです。パク監督の映画は小ネタを仕込んでいることが多く、かなり笑えるのですが(物凄く重い内容の『復讐者に憐れみを』ですら笑える瞬間があります)、本作では全体を笑いに寄せた印象。ただ、エロチック、バイオレンスといったワードから笑いをイメージできない人、分かりやすくお笑いの雰囲気がないと笑えないという方には僕の印象が伝わらないかもしれません。実際、僕が見に行った回でも笑っている人は少なかった気がします。
一番笑えてくるのが日本の文化として出てくるあるものの扱われ方なのですが、いかに日本のHENTAI文化がワールドワイドで知名度があり、日本を代表するものだと認識されているかがよくわかります。これは変態紳士の皆さま必見ですぞーー!あと、終盤に出てくる地下室にいるヤツも凄かった。あれだけ立派なヤツを映画で見るのは久しぶりでした。ネタバレされる前に見るべし!!
次は『アシュラ』
不正で権力の座に就き続ける市長に協力を続けている刑事が主人公。彼が協力者に会いに行ったところに先輩警官が現れてしまい、しかももみ合いになった末に先輩が死んでしまったことから始まる検事局の追求。検事局のスパイにならなければ自分の身が危ないが、奥さんが病で死の淵にいて、その奥さんは市長の親戚、しかも市長からは多額の支援をしてもらっているからそう簡単に寝返ることもできない・・・。そうこうするうちに市長と検事局とのバトルが加速、最後は血みどろの殺し合いだ!
お客さんには韓流マダムも多かったが、映画自体は超男臭くてバイオレントな内容なのでこの人たちは何を思うのだろうかと無駄な勘繰りをしてしまった。それぐらいに、とにかく熱くて男臭いのが見たいぜというアニキな方々にお勧めしたい映画だ。『県警対組織暴力』とか『仁義の墓場』といった東映のヤクザ映画・実録路線の暴力映画が好きな人は必見です!!
韓国映画ラストは『哭声/コクソン』
韓国で今最も勢いのある映画を撮る男、ナ・ホンジン監督の新作。
長編デビュー作『チェイサー』では元刑事のデリヘル店長と殺人鬼との戦いを厭な展開と徹底した暴力で描き、 続く『哀しき獣』では朝鮮族の山賊みたいなオッサンが手斧、鈍器、さらには犬の大腿骨まで武器にして大暴れ。『哀しき獣』のミョン社長ほど「リーダーは先陣を切るものだ」との言葉を体現したキャラクターはいない。
そして長編三作目となる本作では持ち味の前のめりな演出を抑え気味に、田舎の町にジワジワと広がる恐怖を描いた。
田舎町で身内による一家惨殺事件が相次いで起こる。いずれの犯人も殺害現場で錯乱状態になっているところを発見された。殺人どころか、窃盗もめったにない町で起こった事件に警官の主人公は驚くばかり。ただ、ある時から広まっている噂が次第に事件と関係があると思えてきた。
「山奥に住んでいる日本人は鹿を生きたまま食っている。彼と関わったものは気が狂うんだよ。」
その日本人(國村隼)を訪ねた警官がみた恐ろしいもの、それから自分や家族の身に降りかかる現象はいったい?これは呪いか!?悪魔の仕業か!?後半にかけて加速するナ・ホンジン監督のハイテンション演出に驚きっぱなしな2時間半です。後半の祈祷師バトルの凄まじさよ!
カラスと國村隼、鶏と國村隼、犬と國村隼といった様々な動物と映る國村隼、喰う國村隼、釣り人な國村隼など國村隼の様々な姿が見られるので彼のファンなら絶対に見るべき。『悪魔のいけにえ』『オーメン』『エクソシスト』『ツイン・ピークス』『セブン』など様々なホラー・スリラーの要素をごちゃまぜにし、さらにはアジア圏ならではの要素も足したカオスな映画を見終わるころには自分が見たこの映画は何だったんだろうと、もう一度見たくなること請け合いです。
最後は『クーリンチェ少年殺人事件』
権利的な問題があり、20年以上日本でのソフト発売・上映がなかった伝説の映画が4Kリマスターが施されてついに再上映。
作品やエドワード・ヤン監督については様々な方のブログや記事で紹介されているので、リアルタイムでは生まれてもおらず、初鑑賞で特別な思い入れもない人間による感想を少しだけ。
1960年の台湾が舞台ですが、日本統治が長かった土地なので日本家屋が割と残っているのがまず面白いと思いました。60年代当時に日本家屋がどのように台湾の住人に使われていたのかをうかがい知ることができます。
4時間もある大長編の映画ですが、『アラビアのロレンス』のような超大作とは異なり、派手さはありません。中学生の少年がどのような生活を送り、殺人を犯してしまうに至ったのかを丁寧に描いたものです。4時間も見せるとなるとそれだけ映像的なパワーも求められると思いますが、地味ながらも引きの画を効果的に使い、画面構成や照明の具合でワンカットを美しく見せているために不思議と観ていられました。特に夜のシーンはどれも良かった。照明の使い方が秀逸です。
あと、この映画はいかに中学生が危ない存在なのかを再認識させてくれました。
少年たちがギャングのように徒党を組んでいて、ケンカの果てに日本刀を持って夜襲をかけるシーンがあるのですが、これが怖い怖い。出会い頭に容赦なく斬り、襲撃の時は裏口もふさいでおく用意周到さ。でも、やっぱりガキなので逃げられちゃったりする詰めの甘さもある。
大人しい印象の主人公の少年も次第に凶暴なところを見せていくのも怖い。
こいつ、実は危ないやつなんじゃ・・・と思えていったところにあのラスト。
やっぱり童貞の中坊ほど危険なものはないと学んだ次第です。
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ただ、これだけは見ておかねばと思うものもありまして、それが今回紹介する三本の韓国映画と台湾映画の再上映です。いずれも時間を使う価値のある力作ばかり。ぜひ、劇場に足をお運びださい。
まずは『お嬢さん』
『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』の復讐三部作、原題の韓国を舞台にした吸血鬼映画『渇き』など、徹底した暴力や重いテーマを描きつつも、美しい画面構成や音楽で格調高い作品を作り続けているパク・チャヌク監督の新作です。
本作の舞台は日本統治下の韓国。日本人の金持ちの家に結婚詐欺のために女中として忍び込んだ女と、仕えることとなった「お嬢さん」、 女を送り込んだ詐欺師の男との間で繰り広げられる騙し合いを描いたものです。こう書くと、シリアスな映画なのかなと思いますが(予告編だけ見るとシリアスな印象が強いと思います)、実際はユーモアたっぷりのコメディです。パク監督の映画は小ネタを仕込んでいることが多く、かなり笑えるのですが(物凄く重い内容の『復讐者に憐れみを』ですら笑える瞬間があります)、本作では全体を笑いに寄せた印象。ただ、エロチック、バイオレンスといったワードから笑いをイメージできない人、分かりやすくお笑いの雰囲気がないと笑えないという方には僕の印象が伝わらないかもしれません。実際、僕が見に行った回でも笑っている人は少なかった気がします。
一番笑えてくるのが日本の文化として出てくるあるものの扱われ方なのですが、いかに日本のHENTAI文化がワールドワイドで知名度があり、日本を代表するものだと認識されているかがよくわかります。これは変態紳士の皆さま必見ですぞーー!あと、終盤に出てくる地下室にいるヤツも凄かった。あれだけ立派なヤツを映画で見るのは久しぶりでした。ネタバレされる前に見るべし!!
次は『アシュラ』
不正で権力の座に就き続ける市長に協力を続けている刑事が主人公。彼が協力者に会いに行ったところに先輩警官が現れてしまい、しかももみ合いになった末に先輩が死んでしまったことから始まる検事局の追求。検事局のスパイにならなければ自分の身が危ないが、奥さんが病で死の淵にいて、その奥さんは市長の親戚、しかも市長からは多額の支援をしてもらっているからそう簡単に寝返ることもできない・・・。そうこうするうちに市長と検事局とのバトルが加速、最後は血みどろの殺し合いだ!
お客さんには韓流マダムも多かったが、映画自体は超男臭くてバイオレントな内容なのでこの人たちは何を思うのだろうかと無駄な勘繰りをしてしまった。それぐらいに、とにかく熱くて男臭いのが見たいぜというアニキな方々にお勧めしたい映画だ。『県警対組織暴力』とか『仁義の墓場』といった東映のヤクザ映画・実録路線の暴力映画が好きな人は必見です!!
韓国映画ラストは『哭声/コクソン』
韓国で今最も勢いのある映画を撮る男、ナ・ホンジン監督の新作。
長編デビュー作『チェイサー』では元刑事のデリヘル店長と殺人鬼との戦いを厭な展開と徹底した暴力で描き、 続く『哀しき獣』では朝鮮族の山賊みたいなオッサンが手斧、鈍器、さらには犬の大腿骨まで武器にして大暴れ。『哀しき獣』のミョン社長ほど「リーダーは先陣を切るものだ」との言葉を体現したキャラクターはいない。
そして長編三作目となる本作では持ち味の前のめりな演出を抑え気味に、田舎の町にジワジワと広がる恐怖を描いた。
田舎町で身内による一家惨殺事件が相次いで起こる。いずれの犯人も殺害現場で錯乱状態になっているところを発見された。殺人どころか、窃盗もめったにない町で起こった事件に警官の主人公は驚くばかり。ただ、ある時から広まっている噂が次第に事件と関係があると思えてきた。
「山奥に住んでいる日本人は鹿を生きたまま食っている。彼と関わったものは気が狂うんだよ。」
その日本人(國村隼)を訪ねた警官がみた恐ろしいもの、それから自分や家族の身に降りかかる現象はいったい?これは呪いか!?悪魔の仕業か!?後半にかけて加速するナ・ホンジン監督のハイテンション演出に驚きっぱなしな2時間半です。後半の祈祷師バトルの凄まじさよ!
カラスと國村隼、鶏と國村隼、犬と國村隼といった様々な動物と映る國村隼、喰う國村隼、釣り人な國村隼など國村隼の様々な姿が見られるので彼のファンなら絶対に見るべき。『悪魔のいけにえ』『オーメン』『エクソシスト』『ツイン・ピークス』『セブン』など様々なホラー・スリラーの要素をごちゃまぜにし、さらにはアジア圏ならではの要素も足したカオスな映画を見終わるころには自分が見たこの映画は何だったんだろうと、もう一度見たくなること請け合いです。
最後は『クーリンチェ少年殺人事件』
権利的な問題があり、20年以上日本でのソフト発売・上映がなかった伝説の映画が4Kリマスターが施されてついに再上映。
作品やエドワード・ヤン監督については様々な方のブログや記事で紹介されているので、リアルタイムでは生まれてもおらず、初鑑賞で特別な思い入れもない人間による感想を少しだけ。
1960年の台湾が舞台ですが、日本統治が長かった土地なので日本家屋が割と残っているのがまず面白いと思いました。60年代当時に日本家屋がどのように台湾の住人に使われていたのかをうかがい知ることができます。
4時間もある大長編の映画ですが、『アラビアのロレンス』のような超大作とは異なり、派手さはありません。中学生の少年がどのような生活を送り、殺人を犯してしまうに至ったのかを丁寧に描いたものです。4時間も見せるとなるとそれだけ映像的なパワーも求められると思いますが、地味ながらも引きの画を効果的に使い、画面構成や照明の具合でワンカットを美しく見せているために不思議と観ていられました。特に夜のシーンはどれも良かった。照明の使い方が秀逸です。
あと、この映画はいかに中学生が危ない存在なのかを再認識させてくれました。
少年たちがギャングのように徒党を組んでいて、ケンカの果てに日本刀を持って夜襲をかけるシーンがあるのですが、これが怖い怖い。出会い頭に容赦なく斬り、襲撃の時は裏口もふさいでおく用意周到さ。でも、やっぱりガキなので逃げられちゃったりする詰めの甘さもある。
大人しい印象の主人公の少年も次第に凶暴なところを見せていくのも怖い。
こいつ、実は危ないやつなんじゃ・・・と思えていったところにあのラスト。
やっぱり童貞の中坊ほど危険なものはないと学んだ次第です。
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