雑多庵 ~映画バカの逆襲~

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三池崇史監督の新作と聞けばとりあえず気になるファンでございます。

チャンバラ映画も大好きなので見に行ったわけですが、これが思った以上に良かったので紹介。

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あらすじ
謎の老婆により不死の身体となってしまった万次はある少女から父親を殺した男へのかたき討ちのため、用心棒を依頼される。少女に50年前に殺された妹の面影を見た万次は少女を守ることを誓う。仇の剣客や、次々と現れる刺客を倒していく中で傷を負っていく万次。不死とはいえ、次第に衰えていく治癒能力の限界を意識しつつも戦い続ける。かたき討ちの行方はいかに!

三池監督の映画は毎回オープニングが強烈なんですが、『無限の住人』 もスゴイ。
開始5分で100人斬りの大立ち回りです。この物量感はなかなかのもので、主演の木村拓哉さんが斬って斬って斬りまくる!!これだけの乱戦状態でも殺陣をやり切ることができるんだからやっぱりキムタクすげぇ・・・

2時間以上ある映画ですが、上映時間のかなりの割合がアクションに割かれており、シチュエーションや敵のバリエーションが豊富なのでダレることなく一気に見ることができます。敵は忍者みたいな空中殺法をしてくるやつ、薙刀使い、万次と同じく不死の剣士など原作が漫画なだけにデフォルメされたキャラクターが多いですね。

これらの敵を様々な武器を駆使して倒していくのが見どころの一つと言えます。
通常の日本刀もあれば、二股に分かれた形状の刀、鎖鎌、二本の刀の柄をくっつけたもの、さらには手裏剣など、あの薄い着物のどこに隠しているんだといいたくなるほどに様々な武器で万次は戦います。少女を連れた剣客が様々な武器を駆使して敵を倒していく様はさながら『子連れ狼』。『子連れ狼』 の映画シリーズは腕が飛び、首が飛ぶ血しぶき描写満載の暴力映画として有名ですが、そこまでではないにせよ、腕が斬れたり人体が真っ二つになったりと血糊の出番は多め。腕が斬れてもまたつながる万次なので場合によっては自分で斬る始末(笑)


子連れ狼のブルーレイボックスは日本版では出ていませんが、アメリカのクライテリオンが最高のリマスターで発売してくれています!!シリーズ全部入って1万円以下で買えます。これはお勧め。

似ているといえば、6月に日本でも公開のウルヴァリンシリーズの最終作『ローガン』は「不死の能力を持つウルヴァリンが治癒能力が衰え行く中で身を削りつつ少女を守るために戦う」話です・・・・あれデジャヴ?

以前紹介した『血煙の石川五エ門』は「サムライ映画」として面白かったのですが、『無限の住人』もまたサムライ映画とても面白いものでした。僕が思うに、「サムライ映画」か否かの分かれ目は「重さと痛み」です。アクション映画は速さが重視されがちですが、重い日本刀を振って相手を一刀両断する一撃の重みはチョコマカ動いているだけでは表現できません。その点では手数を増やし、走りっぱなしのアクションで武侠映画の感覚を表現しようとした「るろうに剣心」はサムライ映画とは言い難いものです。どれだけ一撃に手ごたえを持たせ、斬った時の痛さを表現できるか?それがサムライ映画の至上命題だと思います。一撃の手ごたえといえば黒澤明監督の『椿三十郎』が有名ですね。

 

痛みという点では無限の住人は主人公が死なない人物だからこれでもかと描かれています。
いくら不死とはいっても痛いものは痛い。ぐっさり刺されることもあれば刀で少しずつ斬られるなど、主人公がこれほど痛みを経験するサムライ映画は他にはありません。万次以外のキャラクターも痛がる場面は多め。本作のテーマは生きていくうえで経験していく痛み(精神的なものも含む)なのではないかと思えてきました。

この痛がる主人公を木村拓哉が見事に演じきっています。いわゆるキムタク演技なのですが、この作品のこのキャラクターにはそれがマッチしているのです。そもそも白黒はっきり分かれた配色で背中に「万」と書いてある着物を着て様になる役者なんてめったにいるものではないでしょう。それをカッコよく着こなせて殺陣もしっかりこなせる(なんとノースタント!実はキムタク、剣道の経験がある人なのだ)だけでもこの映画に出る意味があるというもの。しかも木村さんならではの軽い感覚(悪い意味ではないですよ)と20年芸能界のトップランナーであり続けるスター感によって醸し出される風格がこの映画を成り立たせているといっても過言ではないでしょう。

日本映画では久々に見たエンタメに徹したサムライ映画です。ぜひご覧ください!

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