プロフィールにも書いている通り、それなりにSF好きです。
新作のSF映画で気になるものは必ず見るし、本でも割と読んでいます(あんまり最近の作品は呼んでいませんが。そもそも絶対量がたいしたことないんですが。)
SFは様々な妄想をテクノロジーと結び付けて語っていくことが中心で、妄想を強固なものとするためにたくさんのディテールで固めるところが特徴だと思いますが、そうやってディテールを描いていく中で現実社会を批評したり、壮大なテーマを描くこともできるのがSFの強みでしょう。作り手の妄想をビジュアルで見せることを映画の特徴と仮定するならば、SFこそが映画を最も表したジャンルだとも言えます(ファンタジーも妄想の描写ではありますが、一般的に「ファンタジー」として発想されるものの多くは「剣と魔法と妖精の世界」ばかりで妄想というよりは一種のコスプレ大会、既存のイメージの再生産になりがちです)。
まぁ能書きはいいとして、SF好きならぜひ見てほしい傑作『メッセージ』の紹介です。
ある日、ばかうけに乗って宇宙人がやってきた。
「ばかうけ」といったらスーパーやコンビニなどで売っているおやつでおなじみのアレである。
筆者の頭がおかしくなったわけではありません(異論は認めますが・・・)。
アレにしか見えないものが『2001年宇宙の旅』のモノリスのごとくそびえたっているのです。
世界12か国に突如として現れたものですから大混乱であります。
宇宙人の侵略か?はたまた地球人との交流目的か?宇宙船の調子が悪くなったのか?
コンタクトを試みるために中に入ってみるとやはりいました宇宙人。それも足がたくさんあるいかにもなやつです。足が7本なのでタコともイカとも言い切れません。彼らと対話をしようにも謎の咆哮しかしてくれないし、そもそも見た目が軟体生物のそれなので知能があるのかもよくわかりません。
これではいかんと軍の方々は言語学者の先生を呼びました。
非常に優秀な方らしく、タコイカ星人とも真面目に向き合い、自己紹介をします。すると足の先から墨らしきものを吐き出します。やっぱりイカタコの仲間じゃねーか!と思っていると、それが円を描くではありませんか!どうやら彼らの文字のようです。
それからは彼らとの対話と文字の解読が始まります。ただ、世界中の皆さんはいつまで宇宙人を野放しにするのかと不安が高まって暴動も起こっている様子。軍やお役人の方々もやきもきして国によっては宇宙戦争5秒前の状態。言語学者の先生も夢で亡くなった娘との生活を見るようになり、疲労がたまっていきます。一体、宇宙人の目的は何なのでしょう?彼らと対話は可能なのでしょうか?世界のパニックは止まるのでしょうか?未知との遭遇の行く末はいかに?
というのが大まかなお話。
元ネタになったであろう作品はいくつか挙げられるのですが、それを説明してしまうとネタバレになってしまうので、『2001年宇宙の旅』だけを挙げておきます。宇宙船のルックと人類進化以前の類人猿や月面で人類に接触したモノリスが近いというのはもちろんですが、作品のテーマにかかわる部分で近いものがありました。説明はしませんが。
冒頭でSFは壮大なテーマをも扱えると書きましたが、本作もその例外ではありません。未知との遭遇を通して他者との対話の難しさ、ともすれば即殺し合いとなってしまう戦争大好きな生き物にとって共存することの意味などが問われていきます。こうしたマクロなテーマに加えて、主人公の言語学者の人生に関するミクロな話も展開されます。これらマクロとミクロの話が絡み合い、最後には大きな感動となるのですが、それは実際にみて確認してほしいところであります。これがSFの持つパワーなのだ、時間芸術たる映画の表現なのだと強く印象付ける傑作だと思います。これだけ説得力と美しさを兼ね備えたビジュアルを提示できている作品も珍しいと思います。
おまけの話ですが、音的にも非常に優秀な作品でもあります。
ヨハン・ヨハンソンのサントラはSFのサントラにありがちな壮大さではなく、人の声をリズム楽器のように使った曲や静かに盛り上げる小編成のストリングスなどで未知との遭遇を彩っています。音をどう聞かせるのか、宇宙人の声はどんなものか、シーンをつなげるサウンドブリッジとしての音響効果など、音に注目してよく聞いてみると色々発見のある作品だとも思いました。
ちなみに監督はカナダ出身のドゥニ・ヴィルヌーヴ。『灼熱の魂』『プリズナーズ』『複製された男』『ボーダーライン』と評判のいい作品を連続していて、『ブレードランナー』の続編まで監督するのだからすごいものです。一応、今挙げた作品は全部見ているのですが、『メッセージ』がこの監督の今のところの最高傑作だと思います。少なくとも私はこれが一番好きでした。今年10月に公開予定の『ブレードランナー2049』は不安もかなりありますが、楽しみですね。
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新作のSF映画で気になるものは必ず見るし、本でも割と読んでいます(あんまり最近の作品は呼んでいませんが。そもそも絶対量がたいしたことないんですが。)
SFは様々な妄想をテクノロジーと結び付けて語っていくことが中心で、妄想を強固なものとするためにたくさんのディテールで固めるところが特徴だと思いますが、そうやってディテールを描いていく中で現実社会を批評したり、壮大なテーマを描くこともできるのがSFの強みでしょう。作り手の妄想をビジュアルで見せることを映画の特徴と仮定するならば、SFこそが映画を最も表したジャンルだとも言えます(ファンタジーも妄想の描写ではありますが、一般的に「ファンタジー」として発想されるものの多くは「剣と魔法と妖精の世界」ばかりで妄想というよりは一種のコスプレ大会、既存のイメージの再生産になりがちです)。
まぁ能書きはいいとして、SF好きならぜひ見てほしい傑作『メッセージ』の紹介です。
ある日、ばかうけに乗って宇宙人がやってきた。
「ばかうけ」といったらスーパーやコンビニなどで売っているおやつでおなじみのアレである。
筆者の頭がおかしくなったわけではありません(異論は認めますが・・・)。
アレにしか見えないものが『2001年宇宙の旅』のモノリスのごとくそびえたっているのです。
世界12か国に突如として現れたものですから大混乱であります。
宇宙人の侵略か?はたまた地球人との交流目的か?宇宙船の調子が悪くなったのか?
コンタクトを試みるために中に入ってみるとやはりいました宇宙人。それも足がたくさんあるいかにもなやつです。足が7本なのでタコともイカとも言い切れません。彼らと対話をしようにも謎の咆哮しかしてくれないし、そもそも見た目が軟体生物のそれなので知能があるのかもよくわかりません。
これではいかんと軍の方々は言語学者の先生を呼びました。
非常に優秀な方らしく、タコイカ星人とも真面目に向き合い、自己紹介をします。すると足の先から墨らしきものを吐き出します。やっぱりイカタコの仲間じゃねーか!と思っていると、それが円を描くではありませんか!どうやら彼らの文字のようです。
それからは彼らとの対話と文字の解読が始まります。ただ、世界中の皆さんはいつまで宇宙人を野放しにするのかと不安が高まって暴動も起こっている様子。軍やお役人の方々もやきもきして国によっては宇宙戦争5秒前の状態。言語学者の先生も夢で亡くなった娘との生活を見るようになり、疲労がたまっていきます。一体、宇宙人の目的は何なのでしょう?彼らと対話は可能なのでしょうか?世界のパニックは止まるのでしょうか?未知との遭遇の行く末はいかに?
というのが大まかなお話。
元ネタになったであろう作品はいくつか挙げられるのですが、それを説明してしまうとネタバレになってしまうので、『2001年宇宙の旅』だけを挙げておきます。宇宙船のルックと人類進化以前の類人猿や月面で人類に接触したモノリスが近いというのはもちろんですが、作品のテーマにかかわる部分で近いものがありました。説明はしませんが。
冒頭でSFは壮大なテーマをも扱えると書きましたが、本作もその例外ではありません。未知との遭遇を通して他者との対話の難しさ、ともすれば即殺し合いとなってしまう戦争大好きな生き物にとって共存することの意味などが問われていきます。こうしたマクロなテーマに加えて、主人公の言語学者の人生に関するミクロな話も展開されます。これらマクロとミクロの話が絡み合い、最後には大きな感動となるのですが、それは実際にみて確認してほしいところであります。これがSFの持つパワーなのだ、時間芸術たる映画の表現なのだと強く印象付ける傑作だと思います。これだけ説得力と美しさを兼ね備えたビジュアルを提示できている作品も珍しいと思います。
おまけの話ですが、音的にも非常に優秀な作品でもあります。
ヨハン・ヨハンソンのサントラはSFのサントラにありがちな壮大さではなく、人の声をリズム楽器のように使った曲や静かに盛り上げる小編成のストリングスなどで未知との遭遇を彩っています。音をどう聞かせるのか、宇宙人の声はどんなものか、シーンをつなげるサウンドブリッジとしての音響効果など、音に注目してよく聞いてみると色々発見のある作品だとも思いました。
ちなみに監督はカナダ出身のドゥニ・ヴィルヌーヴ。『灼熱の魂』『プリズナーズ』『複製された男』『ボーダーライン』と評判のいい作品を連続していて、『ブレードランナー』の続編まで監督するのだからすごいものです。一応、今挙げた作品は全部見ているのですが、『メッセージ』がこの監督の今のところの最高傑作だと思います。少なくとも私はこれが一番好きでした。今年10月に公開予定の『ブレードランナー2049』は不安もかなりありますが、楽しみですね。
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