日々アニメの印象が強くなってしまっている当ブログですが、今回もアニメでございます。
6月公開映画で気になるものがかなり多く、アニメだけでもめちゃ多い。
とりあえず見ておきたかった4本について紹介します。本当は個別の記事にしてPV稼ぐべきなんですが、面倒なので1本でサクッと書いて終わり!
1本目は『映画大好きポンポさん』
同名の漫画が原作。元々Webで公開されていたものが書籍化されて割と早い段階でアニメ化も決まっていたそうな。ビジュアルだけを見ると日本のアニメーションだなぁという感じですが、舞台はどーみてもハリウッドな「ニャリウッド」であり、登場人物はアメリカ人、音声は日本語でも書き文字は全部英語です。つまり、音声はアレだ、吹き替えだ。
ニャカデミー賞を何度も受賞しているスーパープロデューサーの孫であり、祖父のコネクションも才能も受け継いだ天才であるジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネット、通称ポンポさんが主人公かと思いきや、そのアシスタントで暗い目をした映画オタクのジーン・フィニ君が本作の主人公でございます。ジーン君がポンポさん脚本・プロデュースの新作の監督に抜擢され、苦しみつつも映画を完成させるまでを描いた舞台裏もの映画となっております。序盤はどう見ても十代前半なポンポさんに違和感があるかもしれませんが、ロジャー・コーマンの如くゲテモノ映画でヒットさせまくり、要所で説得力のある発言をしていく様を見ていると見た目はほとんど気にならなくなりますからご心配なく。ポンポさん役の小原好美さんの子どもなんだけど、子どもじゃない絶妙なお芝居が素晴らしかったです。
映画制作現場を描いた作品は撮影を中心にすることが多いですが、本作ではその後の編集作業をクライマックスにしているのが特徴です。ハリウッド映画の現場では大量に撮影して大量にカットするのが基本です。映画の尺は2時間でも、撮影した素材は100時間だったりもするわけで、切られた98時間のことを観客は知らないわけです。不要なものを見極めて何度もトライアンドエラーしていく地味な作業ですが、そこを編集技術とアクションでスペクタクルなものに演出していくのが良いところ。自分で演出した思い入れたっぷりの素材を切り貼りしていく作業でどんどん正解を見失っていくジーン君の葛藤が見どころですが、それだけではクリエイター向けの内輪な映画になってしまうところを、後半で絡んでくる映画オリジナルキャラクターの存在が補強してくれています。楽しい映画でした!
2本目は『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』
富野由悠季さんが原作で1989年から1990年にかけて全3巻で出版された小説が元になっています。長らく映像化されず、映画製作発表からも随分時間がかかりましたが、待つ価値のある見事な傑作でした。
アニメーション映画ではクオリティにある程度のバラツキは付き物ですが、本作何がすごいって最初から最後までクオリティ面で落ちているカットが存在しないことです。どこをとっても超ハイレベル。作画の動き、デザイン、背景美術、撮影処理、CGどのセクションもリアル傾向で統一されていてそれぞれが高次元に融合している奇跡的な映像に仕上がっています。若干作画が浮いている印象があるカットも存在しますが、それも些細な問題であり、気になることはありません。映画としての統一性を最優先に作られているようで、他のガンダム作品ではヒロイックに描写されがちなモビルスーツもあくまでそこにいる巨大兵器であり、夜襲のシーンではっきりと映すこともしない徹底して抑制された作品です。この抑制があるがゆえに兵器としてのモビルスーツの存在感を強調することになっています。映画中盤の主人公ハサウェイと謎の少女ギギがモビルスーツの襲撃から逃げるシークエンスではビームライフルやスラスターの噴射で溶けたり、倒壊する建物や降ってくる巨大な破片や跳弾が描かれ、これまでのガンダム作品ではめったに感じられなかった巨大兵器のリアルな恐怖が見事に表現されていました。
3部作のうちの第1部であるため、物語的にはまだまだ序章といった感覚ですが、今後の展開に期待の持てる1本です。ドルビーサラウンドで設計された音響のクオリティも素晴らしく、澤野弘之氏の主張し過ぎない音楽もとても良かったです。
3本目は『漁港の肉子ちゃん』
西加奈子による小説が原作、明石家さんまが企画・プロデュースということで話題な映画です。個人的には制作がSTUDIO4℃で『海獣の子供』のメインスタッフが担当しているということの方が重要です。
色んな男に騙されてそのたびに東へ、北へ流れていった肉子ちゃんこと、三須子菊子と娘の喜久子の親子の人情話です。明石家さんまと言えば「生きてるだけで丸儲け」ですが、その言葉まんまな作風となっています。『海獣の子供』は非常にまじめな作風で製作期間も長い大変な現場だったと思いますが、その半分の期間で制作された本作は軽快でユーモアに溢れた作品です。非常にのびのびとしていて、ダイナミックに動きまくる絵が心地よい。渡辺歩監督による丁寧な演出も良かった。写実とデフォルメの絶妙なミックスで描かれる木村真二美術監督による美しい背景も見どころです。明石家さんまコネクションにより集められたキャストも皆良い仕事っぷりで、元嫁の大竹しのぶを起用してしまうさんまさんの思い切りはすごいですよ。アフレコではさんまさんが立ち会って関西弁指導や脚本にないギャグを入れていくなど、名ばかりではないプロデューサーとしての仕事をした結果がこの映画の出来に繋がったのだと思います。『海獣の子供』のその後ともとれるような共通のテーマが見えてくるのも面白く、作風は違えど合わせてみてほしい映画だと思いました。
4本目は『劇場版少女歌劇レヴュースタァライト』
ブシロードとネルケプランニングによる共同企画のメディアミックス作品。ミュージカルを中心として、テレビアニメが2018年に放送され、ゲームやコミックも展開されたうえでの新作劇場版です。
シリーズものの劇場版というと、それまでの作品を見ていないと厳しいものも多いですが、本作は冒頭に今までのあらすじを入れたり、長々とナレーションを追加することもなくキャラクターの紹介をしている点が優秀。キャラ同士の関係性を完全に把握するのは厳しいかもしれませんが、映画1本で独立したテーマを描いているためそれほど難解ではないでしょう。「電車は次の駅へ。では、舞台は?わたしたちは?」劇中で何度も繰り返されるこの言葉が本作のテーマを端的に表しています。
難解ではないとは書きましたが、なんじゃこりゃ?となる作品ではあります。テレビシリーズの時点で突飛な演出が目立つ作品でしたが、劇場版ではその傾向を突き詰め、どこからそのアイディアが出てくるのかと驚かされる演出の連続となっていました。本作の監督、古川知宏さんは長らく幾原邦彦監督の右腕的ポジションで作品に関わってきた演出家で、テレビシリーズは幾原作品のテイストを多分に感じさせる作風でしたが、劇場版では幾原邦彦、シャフト(新房昭之、尾石達也)、庵野秀明らのメタ的・演劇的な要素を盛り込みつつ、『マッドマックス 怒りのデスロード』からの引用や大映・東映へのオマージュもやってしまう。さらには唐突なアルチンボルド!?でトマトをメタファーとして使うなど、映像でいかに演出するかを突き詰めた映画です。シェイクスピアからの引用もあるし、幾原邦彦監督が多大な影響を受けた寺山修司を彷彿させる瞬間もあって、言葉の映画でもあります。爆音仕様の音響やバキバキな撮影処理、シネマスコープの画角を活かした画面設計も含めて劇場で体験するべき一本です。今回紹介する4本の中では一番驚きがありました。
以上、4本連続で紹介しました。いかがでしょうか?(Nintendo Direct風)
次回の更新もお楽しみに!
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