雑多庵 ~映画バカの逆襲~

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2017年に公開された『バーフバリ 王の凱旋』が日本でも大ヒットしたS・S・ラージャマウリ監督の新作がついに日本上陸!
しばらく前からYouTubeやSNS等で映像を断片的に見ていましたが、本編をフルで見たときの圧力は凄まじかった。。。バーフバリを超える衝撃があります!



バーフバリは王家の血を引く男が圧政を敷く男を倒して王位を継承する「指輪物語」にもあった王の帰還を描いたファンタジーでした。一転して『RRR』は1920年代のイギリスが支配していた時代のインドを描いた歴史物となっています。歴史者とはいえ、リアリティのラインはバーフバリとほとんど変わらない感覚のため、神話のような壮大な語り口となっているのが特徴です。

冒頭のスタッフクレジットからしてとにかくデカい。開始早々にテンションの高い音楽が鳴り響く中で順にクレジットを表示していき、最後に監督S・S・ラージャマウリの名前を一際豪華に見せる演出が既に本作の作風を表していると思います。この極端な盛り上げ方が本当に上手いのです。

そこからの本編はまさにジェットコースターの如く下がったと思ったら急激に上昇する展開が続きます。イギリスによる圧政に怒れる群衆の中からたった一人の男を逮捕するべく突入する警官と群衆たちとのバトルシーンは物量感がすごかった。圧倒的な数でもみくちゃにされながらも一人で状況を打開していくアクションの組み立てが上手くて、単なる三國無双的ななぎ倒していくアクションとは異なった絶妙なリアリティのある集団戦が描けているのです。いやぁ、すげぇもん見たな。もう終わりかな?と思って席を立ちかけましたが、これでもまだ映画開始から10分程度。本編尺が3時間あるため、まだまだ序盤なのです。

鑑賞中にもう終わりかな?と思う瞬間が幾度も繰り返される構成は見ていると次第にハイな気分になってきます。所々でその薬草効きすぎだろ!とか回復力がありえねえー!とかツッコミどころは上げればキリがないのですが、強烈なアップダウンでハイな状態の脳はすべてを肯定的に受け入れてしまうもので、何もかもが面白い気がしてくるから危険です。

アクションの組み立てで感心した例でいうと、列車事故で火の海となってしまった川に取り残された少年を救うために、橋の上と川岸にいる男同士が動き出すシーンも素晴らしかった。互いにアイコンタクトのみで意思を伝え、一人は馬に乗り、もう一人はバイクで橋の上で合流。互いの体にロープを巻き付けて橋を挟んでジャンプ!その時一人の手には大きな旗が。一人は空中ブランコの要領で少年を対岸に投げ飛ばし、もう一方の男は持っていた旗を空中パス。旗を受け取った男は体に旗を巻き付けて燃え盛る火の中へ。しかし、事前に川の水で濡れた旗のお陰で火を耐えて戻ってきたところをガッチリ握手で受け止める!そこで初めて互いに名乗り合う男たち!タイトル「RRR」ドーン!!いや、凄すぎません?まだ始まって30分ぐらいなんですが。。。

その後も猛獣を解き放ってパーティ会場を大混乱させたり、前半のちょっとしたシーンが伏線として機能する後半のCO-OPアクション、いけ好かないイギリス人にバカにされたのをインドの伝統的なダンス、ナートゥで逆襲するダンスバトルシーンなど見どころしか無い異常な映画です。インド映画の定番であるラストのミュージカルシーンも充実していて3時間観客を楽しませ続けることに特化したという点では史上最強の映画ではないかと思いました。



神話的に描くことは意識されているようで、クライマックス近辺では2人の英雄が後光が差す中で鬼神の如き活躍ぶりが繰り広げられます。このシーンで流れる音楽が2人の神を称える曲にもなっていて、普通の人間のはずの2人がイギリスを打倒する神となる瞬間が描かれているのです。

この徹底した有無を言わせないようなエンタメ性と神話としてイギリス打倒を描く革命の物語は問題も含んでいると思います。実際のインド革命にはガンジーやネルーのような非暴力による改革を目指した動きもあったのだし、国民たちの力によって成し遂げられたことです。それを神が国を救う物語として描いてしまうことの違和感や、暴力的な革命を是とするよう受け取られかねない危険性については留意するべきだと思います。あくまでエンタメとして楽しんだ上で、実際のインド開放が如何にして成し遂げられたかを調べてみるのが良いと思います。

上記のように気になった点はあったものの、エンタメとしてはこれ以上はないと断言出来るぐらいに凄まじい体験ができる映画です。応援上映でワーワー騒ぎながら見たいですねぇ。何ならナートゥ踊りながら見たいぐらいですよ!

ちなみにラージャマウリ監督の過去作ではハエに転生した男が恋人を守るために戦い、踊る衝撃作『マッキー』もおすすめです!


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