2024年が始まって数日経ってしまったが、2023年のベストテンを書いておく
映画
- ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!
- ベネデッタ
- ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り
- グリッドマン ユニバース
- フェイブルマンズ
- BLUE GIANT
- SAND LAND
- キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
- 窓ぎわのトットちゃん
- クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
次点:青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない
23023年のアニメーション映画としては「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」が素晴らしい出来なのは間違いないが、この一本では物語としては完結していないこともあってあえて外した。後編についてはハリウッドのストライキの影響もあったりで製作が難航しそうだ。そんな中自分が1位に選んだのは「ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!」。コミック的な塗りのキャラがそのまま動くビジュアルは確実に「スパイダーバース」以降の作品だと感じるが、本作の場合はティーンエイジでミュータントな亀忍者たちを描く物語が素晴らしかった。
地下で過ごす普通の高校生に憧れるミュータントたちはX-MEN的な悲哀があるが、彼らはティーンエイジならではの明るくフレッシュなエネルギーも持ち合わせている。英語の音声ではジャッキー・チェンが亀忍者たちの父親的な役回りを演じている点もポイントで、最高のゲロ吐きシーンを披露してくれる現代的アレンジを施されたエイプリルの表現も良かった。終盤での街を守るためにミュータントたちと共闘するニューヨーカーたちも素晴らしく、ヒーローものの良さが詰まった傑作だと思う。
2位の「ベネデッタ」はポール・バーホーベン監督の描く女性の強靭なキャラクターも言わずもがなだが、ピーテル・ブリューゲルの絵画のような風刺的なニュアンスがあるビジュアルも素晴らしい。時代の捉え方や描き方については文句なしで、悪趣味ではあるものの、実際こんなもんじゃないの?と思わされる説得力がある。
4位の「グリッドマン ユニバース」はMCU以降大量に作られているマルチバースかと思いきや、少し異なるものだった。2つの作品とのクロスオーバーではあるものの、様々な視点による認知の集合体としてグリッドマンは存在しているとする展開は皆の想像力が一つの世界を形作るユニ(「一つ」の意)バース思想だ。平行世界の重なりを描くよりも、視点の多様さを主題に持って来きている点でマルチバースに対する一種のカウンターになっている。
6位の「BLUE GIANT」は自分も一応ジャズを演奏する人間の端くれで原作も知っていたから楽しめたというのはある。多くの映画やアニメで演奏家の物語は描かれているが、演奏中の心象風景を色とアニメーションの力でカラフルに描いた演出は見たことがないものだ。演奏者の気分を描くことに成功しているだけでも素晴らしい音楽映画だと思う。
5位、8位、10位には巨匠たちの新作を持ってきたが、いずれの作品もまだまだイケる!と思わされるエネルギーと同時に老成したからこそ描けるものがあった。スピルバーグの映画の巧さはいつも通りだが、ラストの軽快さが特に良かった。スコセッシの歴史ものを描く意識の高まりは年齢を感じさせるが、そこに加えて絶妙なおバカ(レオナルド・ディカプリオが素晴らしい!)が波乱を起こす可笑しさもある。クローネンバーグの新作はそのまま老いをテーマにしたような作品だが、新しい食べ物への挑戦で新たな人生の獲得を感じさせて終わるラストに残るのは老いへの悲壮さではない。
9位の「窓ぎわのトットちゃん」は黒柳徹子さんの幼少時代を書いた自伝本が原作だが、その時代は第二次大戦の時代でもある。あくまで子供の視点で描いているので露骨に戦争の場面を描くことはしないが、戦争の影が次第に強くなっていくにつれて服装がダサくなり、食べ物が貧相になって大人たちが厳しい表情ばかりをするようになっていくのを見ると戦争は本当に厭なものだと思う。テイストの異なる幻想的なシーンも入れつつ、丁寧な動きで描かれる作風は「この世界の片隅に」の影響を感じるが、長くドラえもんに関わってきた八鍬新之介監督は先達に負けない力を持った監督であることを企画・脚本・絵コンテと全面的に関わる本作で見せてくれた。予告編の100倍良い映画だったので、未見の方は是非御覧いただきたい。
アニメ
- ウマ娘プリティーダービー Road to the Top
- 天国大魔境
- お兄ちゃんはおしまい!
- ホリミヤ -piece-
- ポケットモンスターリコとロイの旅立ち
- 無職転生 Ⅱ ~異世界行ったら本気だす~
- 江戸前エルフ
- アイドルマスター シンデレラガールズ U149
- Lv1魔王とワンルーム勇者
- 転生王女と天才令嬢の魔法革命
アニメに関しては年末にgame gameで配信した番組で紹介しているが、「呪術廻戦」も「葬送のフリーレン」も「水星の魔女」も無視して構成したランキングは別に逆張りを狙ったのではなく、自分の趣味を凝縮した結果である。
「ウマ娘プリティーダービー Road to the Top」に関しては5月にこの後の時代を舞台にした新作劇場版も予定されているので、期待している。
レースの熱狂とそこに挑む人たちのドラマは常に盛り上げてくれるが、その中でも「Road to the Top」はシリーズ屈指の出来。ネット上で全4話を無料公開してしまうのもCyGamesの気合を感じる。
「天国大魔境」はProduction IGの本気を見た感覚がある。演出や作画のトータルの完成度が高く、世紀末世界の嫌な暴力(特に性暴力)に関しても描かれていて非常に厭で良かった。
「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」については最終話放送後に配信でかなり話したので、是非みてほしい。
年末の配信でも語っているが、2023年のアニメは「オヤジ化」が裏テーマなんじゃないかと考えている。男性性を剥奪される「お兄ちゃんはおしまい!」や、性的不能を抱えた主人公の「無職転生 Ⅱ」は視聴者層を反映しているのかと邪推するぐらいだった。「江戸前エルフ」「Lv1魔王とワンルーム勇者」は老後をどう生きるかがテーマだと思う。エネルギーに溢れた瞬間はそう長くは続かないもので、多くの人はピークを超えた後の人生のほうが長い。若者ばかりの世界を描く作品より、その後の話を描く作品が増えつつあるのも視聴者層の変化を反映しているのかもしれない。
「転生王女と天才令嬢の魔法革命」は「マトリックス・リローデッド」のラストで言及された「世界に虹をかける」という、明確なレインボーフラッグ表現を文字通り行っていて、清々しい気持ちで見終えることができた。「天国大魔境」でも素晴らしい演技をしていた千本木彩花さんが本作でも良い仕事をしていて、2024年は「ダンジョン飯」でも良い役に入っているあたり今後のさらなる活躍が期待される。
長らく放置気味な当ブログだが、今後は更新の頻度も上げられればとは思っている。
noteのような気合の入れた記事を投下するよおりも、ブログは日々の記録として機能させるのが良いんだろうね。
では、今年もよろしく
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