雑多庵 ~映画バカの逆襲~

管理人イチオシの新作映画を紹介するブログです。SF、ホラー、アクション、コメディ、ゲーム、音楽に関する話が多め。ご意見・ご感想、紹介してほしい映画などあれば「Contact」からメッセージを送ってください。あと、いいお金儲けの話も募集中です。

普段は新作映画を紹介している雑多庵ですが、新作だけではなかなかネタにしたくなる映画になかなか出会わなかったり、書くタイミングを逃したりと更新が滞ることが多い今日この頃。そこで、今回からは旧作映画も紹介していこうと思います。ある程度のテーマを設定した方が面白いかと思いますので、「野蛮なる映画」と題して管理人が好きな野蛮な映画を紹介していきます。なお、このシリーズではネタバレを含みます!

※野蛮な映画:世界は暴力に満ちている。人間であろうと動物だろうと等しく暴力的で欲望に支配されている野蛮な存在。「野蛮な映画」とはこうした否定しようのない事実をあるがままに描こうとする作品のことを呼んでいます。

今回紹介するのはデンマーク映画の『偽りなき者』(2012)

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舞台はデンマークの片田舎の町。ルーカスは妻と別れて今は独身、保育士として働いています。子供たちに人気のルーカスは親友の娘クララと特に仲良くなり、迎えがなかなか来ないクララを家に送るようになります。ケンカしがちな両親と違って、優しいルーカスに幼ながらに恋心を抱くようになったクララですが、ルーカスはそんな少女の想いをそれとなく拒否してしまうのです。そのことへの仕返しのつもりなのか、クララは保育園の園長に「ルーカスのがおっきくなってた」と言ってしまうんですよ!この何気ない一言がルーカスの人生を狂わすきっかけとなる超怖い話!

マジ冤罪勘弁・・・
クララの発言を「女の子の前で(チンコを)大きくしていた=性的虐待!」と瞬時に脳内変換した園長はその後、児童相談所(?)の人を呼んでクララに聞き取り調査をするのです。そこでのやり取りが何とも言えず怖いものです。だいたい以下のようなノリで、

「君はルーカスに何をされたのかな?」
「・・・」
「ルーカスのおちんちんを見たのかい?」
「ううん」
「怖がらなくてもいいんだよ。正直に言いなさい。ルーカスにイタズラされたんだろう?」
「・・・」
「大丈夫。うなずくだけでもいいから。」
「・・・(コクリ)」

というもの。これ、誘導尋問ですよね?容疑をかけられている側からすればとんでもない話ですよ!でもね、こういうことって実際にあるみたいです。最近では足利事件と呼ばれた1990年に起きた幼女誘拐殺人事件の容疑者として、逮捕、起訴、実刑が確定して服役していた方が2010年になってようやく無罪判決が出て釈放されるという冤罪事件がありました。この事件の場合は幼稚園バスの運転手だったそうですが、容疑者となった際には映画と同じような会話があったのではと思わされます。いや、ホント、大人の余計なガキへの配慮やめてほしいわ・・・まあ確かにルーカスの見た目は容疑者っぽく見てきちゃうけど笑

純粋ってことは?
なんで子どもの言うことを登場する大人たちは信じてしまうかというと、舞台となる土地では「子どもと酔っ払いは嘘をつかない」という言い伝えがあるそうで、子どもは純粋無垢だから嘘をつかない!としているのだそうな。でもね、僕からすれば子どもも酔っ払いも嘘つくだろ!と思いますけど。酔っ払いは置いておいて、子どもは嘘をつくものです。子どもが純粋なのは間違いないとは思いますが、純粋だから嘘をつかないという論理は間違っています。純粋だからこそ嘘をつくのです。普通、人間は嘘をつくものです。それを「嘘をついたら地獄に落ちる」「嘘ついたら針千本飲ます」といった嘘は悪との刷り込みがされることで嘘をつかなくなるのです。つまり、後天的に嘘をつかなくしているのだから純粋とは違うでしょう?子どもは純粋かつ嘘つきなのです

地元ネットワーク怖すぎる・・・
本作のポイントの一つとして田舎の恐怖があります。「田舎に泊まろう」に代表される田舎の人は優しくていい人ばかりとの認識があるでしょうが、田舎は怖い側面もあります。特に怖いのは地元ネットワーク。『偽りなき者』の怖いのはルーカスが変態ではとウワサがすぐに広まってしまい、近所中から白い眼で見られ、家に石を投げいれられるわ、犬殺されるわ、スーパーの出入りを禁止されるわとひどい目に合うところがありますが、これは人口が少なく、ご近所さんは皆知り合い、法権力より地元のルールを優先(もちろんどこでもそうだとは言いません)という田舎ならではの事情があります。

北欧の田舎は超野蛮!
あと、舞台が北欧ならではの野蛮なポイントがあって、野郎どもが会合という名の飲み会で「飲~め、飲~め、飲め」とかいっている嘘をつかない人々が出てくる場面の下品さですとか、狩猟をしてこそ大人の男として認められるという野蛮さを発揮しております。まあ、犬を殺す時点で十分すぎるくらいに野蛮ですよね!しかも、この映画のエンディングはそれまでナヨナヨしていたルーカスが暴力を含む積極的な行動をすることで田舎社会に復帰するわけですよ。野蛮な方に歩み寄ると身内になれるというか、やっぱり郷に入れば郷に従えってことですかね!?

『偽りなき者』は冤罪事件がいかにして起こりうるのかといった誰にでも起こりうる怖い話であり、人と人のつながりがちょっとしたことで崩れていくと、人間の野蛮な側面が現れてくるといった文明社会の野蛮性をも教えてくれる映画です。あと、やたらと食事や飲み物を進めてくる場面がありますが、食事をふるまうことは世界共通のおもてなしの意味であり、酒を酌み交わすのは友好関係を意味しているので、そこのところも要チェック。



こういう感じで野蛮な映画を紹介していこうかと思いますので、次回(いつかは未定)もお楽しみに!

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