脚本家の宮藤官九郎を始め、個性バリバリの団員を擁する劇団「大人計画」のボス、松尾スズキの監督作!
意外といい映画でしたよ~!
都会モンの「田舎」
主人公タケは都会で銀行員として勤めていたものの、お金の問題で身を滅ぼしたり、借金を苦に自殺する人々に関わっていくうちに「お金恐怖症」になってしまう。お金を見るだけで失神しそうになったので、お金を使わずに生きることを決意。東北の限界集落ギリギリの村に行ってジヌ(銭)を使わない生活を始めようとするのだが・・・
この手の設定だと田舎でシンプルライフだぜ!って感じの都会モンが妄想する「楽しい田舎」が描かれがちなのだが、「ぼのぼの」でも有名な福島の漫画家いがらしみきお氏が原作なだけに、そんなフザけた話ではない。ガチな田舎事情を知っている人ならではの田舎描写が素晴らしい。
「ぼのぼの」これは知っている人多いのでは?
筆者は両親の実家が富山県の稲作地帯なのでそれなりに分かるつもりなのだが、田舎は都会の人間が考えるほど「シンプルライフ」ではない。実際は都会の人間以上にテクノロジーに支えられて生活しているものだ。
例を挙げておこう
・車は一人一台なほど所有率が高い。歩いていける範囲に商店がほとんどないと車があるかどうかは死活問題。
・山奥の村では電気やガスが通っていないと寝ている間に凍死しかねない
・専業農家はインターネットを利用した商売をしていることが多い。田舎のばっちゃでもタブレットは使っている
・農作業は機械を使うし、農薬も当然使う。ジジババが家族だけで作業しようと思ったら手作業なんてありえん
もっと例は挙げられるはずだがこのくらいで。要するに、田舎暮らしはそれなりに金がかかるのだ。
「金を使わずに生きていく」という発言がいかに田舎を舐めたものなのかはお分かりいただけただろう。
まぁ、そんな舐めた都会モンの主人公なので、開始早々田舎の洗礼を受ける。
ヒートテックで夜をしのごうにも寒すぎるし、火を起こそうにも薪を切るナタはない。元銀行員なのでけっこう貯蓄があるものだから、貯金目当ての詐欺にもあう。それでも金を使わないと言うのだから、いよいよこいつはバカなだけなんじゃないかと思うのだが、このバカぶりが後半の展開に意味を持ってくるのが面白い。
実は政治的
後半は村の合併に関する裏工作と村長選挙の話に突入していくのだが、この展開が田舎暮らしコメディに政治的なニュアンスを加える。政治には金が関わるものだし、裏取引もあるものだ。悪いことをしていないとしても、金のことを考えていない政治家なんていないだろう。だが、公人が金のことばかり考えていていいのか?皆のために尽くすのが仕事なんじゃないのか?こうした疑問に「ジヌよさらば」と本作は答えて見せる。この映画に政治について考えさせられることになるとは思わなかったよ!!
あまちゃんパート2!?なキャスティング
大人計画所属の俳優から始まり、様々な変な人が多数登場する。特に松田龍平、片桐はいり、荒川良々、皆川猿時、伊勢志摩、松尾スズキ、村杉蝉之介は宮藤官九郎の脚本のキレが最高だったNHK朝ドラ「あまちゃん」にも出ていたのが面白い。あれも福島が舞台だったので、映画のために東北弁を指導する必要はあまりなかったのではと思う。
阿部サダヲと松たか子の夫婦役って『夢売るふたり』かよ!と思うとパロディっぽく見えてくる
撮影当時19歳の二階堂ふみの制服姿に女子校生ピンサロ的なコスプレっぽさを感じていたのだが、援交&水商売をしている設定だったので見立ては大外れではなかった
あの映画へのオマージュ
映画好きとしてはオマージュ的な部分が気になるというもの。
本作ではポン・ジュノ監督のドロップキックとポール・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』(1999)の終盤の大量に○○○が降ってくるスーパーナチュラルなシーンへのオマージュらしきものがあった。
ポン・ジュノ監督作にはほぼ必ず登場するドロップキック。特に画像の『殺人の追憶』での「初対面の人物に坂の上からドロップキック」はスタントとしてもインパクト大
映画のレビューブログ「三角締めでつかまえて」の『スノーピアサー』紹介記事の後半にポン・ジュノ作品におけるドロップキックのGIF動画集があったので、気になる人は見てほしい
http://ameblo.jp/kamiyamaz/entry-11784708573.html
『マグノリア』の問題のシーン(※ネタバレ注意)
ちなみに『マグノリア』の問題のシーンは出エジプト記からの引用である
出エジプト記を描いた『エクソダス』(2015)の中にもアレの大群が出てくる
予想外にバイオレントでエロくてポリティカルな攻めた姿勢の娯楽映画で、大変面白かったです。見に行った劇場のお客さんの反応が良くて、終始笑いが起きていたのが印象的。こういう笑いがきちんと受け入れられるのっていいですな。邦画もまだ希望がある。
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意外といい映画でしたよ~!
都会モンの「田舎」
主人公タケは都会で銀行員として勤めていたものの、お金の問題で身を滅ぼしたり、借金を苦に自殺する人々に関わっていくうちに「お金恐怖症」になってしまう。お金を見るだけで失神しそうになったので、お金を使わずに生きることを決意。東北の限界集落ギリギリの村に行ってジヌ(銭)を使わない生活を始めようとするのだが・・・
この手の設定だと田舎でシンプルライフだぜ!って感じの都会モンが妄想する「楽しい田舎」が描かれがちなのだが、「ぼのぼの」でも有名な福島の漫画家いがらしみきお氏が原作なだけに、そんなフザけた話ではない。ガチな田舎事情を知っている人ならではの田舎描写が素晴らしい。
「ぼのぼの」これは知っている人多いのでは?
筆者は両親の実家が富山県の稲作地帯なのでそれなりに分かるつもりなのだが、田舎は都会の人間が考えるほど「シンプルライフ」ではない。実際は都会の人間以上にテクノロジーに支えられて生活しているものだ。
例を挙げておこう
・車は一人一台なほど所有率が高い。歩いていける範囲に商店がほとんどないと車があるかどうかは死活問題。
・山奥の村では電気やガスが通っていないと寝ている間に凍死しかねない
・専業農家はインターネットを利用した商売をしていることが多い。田舎のばっちゃでもタブレットは使っている
・農作業は機械を使うし、農薬も当然使う。ジジババが家族だけで作業しようと思ったら手作業なんてありえん
もっと例は挙げられるはずだがこのくらいで。要するに、田舎暮らしはそれなりに金がかかるのだ。
「金を使わずに生きていく」という発言がいかに田舎を舐めたものなのかはお分かりいただけただろう。
まぁ、そんな舐めた都会モンの主人公なので、開始早々田舎の洗礼を受ける。
ヒートテックで夜をしのごうにも寒すぎるし、火を起こそうにも薪を切るナタはない。元銀行員なのでけっこう貯蓄があるものだから、貯金目当ての詐欺にもあう。それでも金を使わないと言うのだから、いよいよこいつはバカなだけなんじゃないかと思うのだが、このバカぶりが後半の展開に意味を持ってくるのが面白い。
実は政治的
後半は村の合併に関する裏工作と村長選挙の話に突入していくのだが、この展開が田舎暮らしコメディに政治的なニュアンスを加える。政治には金が関わるものだし、裏取引もあるものだ。悪いことをしていないとしても、金のことを考えていない政治家なんていないだろう。だが、公人が金のことばかり考えていていいのか?皆のために尽くすのが仕事なんじゃないのか?こうした疑問に「ジヌよさらば」と本作は答えて見せる。この映画に政治について考えさせられることになるとは思わなかったよ!!
あまちゃんパート2!?なキャスティング
大人計画所属の俳優から始まり、様々な変な人が多数登場する。特に松田龍平、片桐はいり、荒川良々、皆川猿時、伊勢志摩、松尾スズキ、村杉蝉之介は宮藤官九郎の脚本のキレが最高だったNHK朝ドラ「あまちゃん」にも出ていたのが面白い。あれも福島が舞台だったので、映画のために東北弁を指導する必要はあまりなかったのではと思う。
阿部サダヲと松たか子の夫婦役って『夢売るふたり』かよ!と思うとパロディっぽく見えてくる
撮影当時19歳の二階堂ふみの制服姿に女子校生ピンサロ的なコスプレっぽさを感じていたのだが、援交&水商売をしている設定だったので見立ては大外れではなかった
あの映画へのオマージュ
映画好きとしてはオマージュ的な部分が気になるというもの。
本作ではポン・ジュノ監督のドロップキックとポール・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』(1999)の終盤の大量に○○○が降ってくるスーパーナチュラルなシーンへのオマージュらしきものがあった。
ポン・ジュノ監督作にはほぼ必ず登場するドロップキック。特に画像の『殺人の追憶』での「初対面の人物に坂の上からドロップキック」はスタントとしてもインパクト大
映画のレビューブログ「三角締めでつかまえて」の『スノーピアサー』紹介記事の後半にポン・ジュノ作品におけるドロップキックのGIF動画集があったので、気になる人は見てほしい
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『マグノリア』の問題のシーン(※ネタバレ注意)
ちなみに『マグノリア』の問題のシーンは出エジプト記からの引用である
出エジプト記を描いた『エクソダス』(2015)の中にもアレの大群が出てくる
予想外にバイオレントでエロくてポリティカルな攻めた姿勢の娯楽映画で、大変面白かったです。見に行った劇場のお客さんの反応が良くて、終始笑いが起きていたのが印象的。こういう笑いがきちんと受け入れられるのっていいですな。邦画もまだ希望がある。
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