普段はアメリカ映画について書いていますが、今回はとっても真面目なフランス語の映画です。
タイトルの「アムール(=AMOUR)」はフランス語で「愛」の意。
原題ではそのまま『AMOUR』ですが、邦題はそのままでは意味が伝わりにくいからか『愛、アムール』と意味が重なる事態が発生しています。まぁ、語呂がいいからいいか(笑)
・あらすじ紹介
主人公はフランスの高級アパルトマントに住む老夫婦。娘はとっくに独立し、ピアノの先生だった妻の教え子は海外でもコンサートをこなすようになっていた。人生の折り返し地点もとっくに過ぎ、平和で満ち足りた老後を送っていた。だが、ある朝妻が朝食のときに硬直してしまったことから平穏な生活が崩壊し始める。退院し、自宅療養を始めたが、次第に妻の病状は悪化。病院嫌いの妻と二度と入院させないことを約束した夫は身体だけではなく言葉も不自由になっていく妻を看病し続けるのだったが・・・
とにかく静かで淡々としています。
冒頭でコンサートに行く以外はアパルトマントの外での出来事は出てきません。そして登場人物は少なく、主役の二人の関係性に焦点があてられています。よって演出が重要になると思うのですが、監督のミヒャエル・ハネケは過度な演出を避け、徹底的に抑制した雰囲気を創っています。これがこの映画をリアルなものにしている要因です。また、カメラをほとんど動かさず、人物がフレームアウトしてもそのまま映し続けるのは普通の映画ではありえないことですが、この映画では定点観測の映像でも見ているかのような気分になり、その現場を見ている感覚になります。切り替えしが少なめで、長回しの多い編集はハネケ監督の他の作品でも見られます。
主演は『二十四時間の情事(原題:Hiroshima mon amour、1959、仏・日)』で有名なエマニュエル・リヴァ(なんと2013年現在、御年86歳!)と『男と女(1966、仏)』のジャン=ルイ・トランティニャン(こちらは82歳)。二人の演技がとても自然で本当の夫婦のように思えます。だからこそ夫婦の平和が崩壊していくのを見るのがつらい。とにかくエマニュエル・リヴァさんの演技がすごい。このばあちゃんマジで死ぬんちゃうか?と思ったほどです。
ハネケ監督は今作でヒューマニズムにあふれた感動作を創ってきましたが、彼のフィルモグラフィの中では特異な一本となりました。これまでハネケ監督が描いてきたのは人間のイヤーな部分ばかりで、嫌な気持ちにさせられるものでした。『ファニーゲーム』はブルジョワ家庭を特に意味もなく殺す過程を描いただけですし、『白いリボンは』極端な教育が子供たちにマイノリティや「悪いやつ」を排除することの原因となったことが描かれています。そこには一切のカタルシスはなく、希望もありません。だから『愛、アムール』のような人間の良い部分が描かれている作品は特異なのです。では、全くハネケ監督テイストがないかというと、それも違います。前述した演出や撮影の感覚は同じですし、ウソくさいハッピーエンドもありません。確かに感動作ではありますが、泣けるだけの甘い作品ではなく、厳しい現実を考えさせてくれます。
とても静かな本作は幕切れもまた静かです。余韻を深く残す今作は軽く見るには向きませんが、多くの人に見てほしい作品です。特にこれから一緒に歳を重ねていこうと考えている夫婦に見てほしいです。管理人は人生や老いること、夫婦について深く考えさせられました。老老介護の問題を考えるうえでも見ておくことをすすめます。
タイトルの「アムール(=AMOUR)」はフランス語で「愛」の意。
原題ではそのまま『AMOUR』ですが、邦題はそのままでは意味が伝わりにくいからか『愛、アムール』と意味が重なる事態が発生しています。まぁ、語呂がいいからいいか(笑)
・あらすじ紹介
主人公はフランスの高級アパルトマントに住む老夫婦。娘はとっくに独立し、ピアノの先生だった妻の教え子は海外でもコンサートをこなすようになっていた。人生の折り返し地点もとっくに過ぎ、平和で満ち足りた老後を送っていた。だが、ある朝妻が朝食のときに硬直してしまったことから平穏な生活が崩壊し始める。退院し、自宅療養を始めたが、次第に妻の病状は悪化。病院嫌いの妻と二度と入院させないことを約束した夫は身体だけではなく言葉も不自由になっていく妻を看病し続けるのだったが・・・
とにかく静かで淡々としています。
冒頭でコンサートに行く以外はアパルトマントの外での出来事は出てきません。そして登場人物は少なく、主役の二人の関係性に焦点があてられています。よって演出が重要になると思うのですが、監督のミヒャエル・ハネケは過度な演出を避け、徹底的に抑制した雰囲気を創っています。これがこの映画をリアルなものにしている要因です。また、カメラをほとんど動かさず、人物がフレームアウトしてもそのまま映し続けるのは普通の映画ではありえないことですが、この映画では定点観測の映像でも見ているかのような気分になり、その現場を見ている感覚になります。切り替えしが少なめで、長回しの多い編集はハネケ監督の他の作品でも見られます。
主演は『二十四時間の情事(原題:Hiroshima mon amour、1959、仏・日)』で有名なエマニュエル・リヴァ(なんと2013年現在、御年86歳!)と『男と女(1966、仏)』のジャン=ルイ・トランティニャン(こちらは82歳)。二人の演技がとても自然で本当の夫婦のように思えます。だからこそ夫婦の平和が崩壊していくのを見るのがつらい。とにかくエマニュエル・リヴァさんの演技がすごい。このばあちゃんマジで死ぬんちゃうか?と思ったほどです。
ハネケ監督は今作でヒューマニズムにあふれた感動作を創ってきましたが、彼のフィルモグラフィの中では特異な一本となりました。これまでハネケ監督が描いてきたのは人間のイヤーな部分ばかりで、嫌な気持ちにさせられるものでした。『ファニーゲーム』はブルジョワ家庭を特に意味もなく殺す過程を描いただけですし、『白いリボンは』極端な教育が子供たちにマイノリティや「悪いやつ」を排除することの原因となったことが描かれています。そこには一切のカタルシスはなく、希望もありません。だから『愛、アムール』のような人間の良い部分が描かれている作品は特異なのです。では、全くハネケ監督テイストがないかというと、それも違います。前述した演出や撮影の感覚は同じですし、ウソくさいハッピーエンドもありません。確かに感動作ではありますが、泣けるだけの甘い作品ではなく、厳しい現実を考えさせてくれます。
とても静かな本作は幕切れもまた静かです。余韻を深く残す今作は軽く見るには向きませんが、多くの人に見てほしい作品です。特にこれから一緒に歳を重ねていこうと考えている夫婦に見てほしいです。管理人は人生や老いること、夫婦について深く考えさせられました。老老介護の問題を考えるうえでも見ておくことをすすめます。
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